あれは私が祖父母の家で、シャボン玉をして遊んでいたときのことでした。
学校が終わると父と母の仕事が終わるまで、祖父母の家に預かってもらっていたのです。
私は一人っ子であの日祖父母の家にいた子供は私だけのはずでした。
でもぱたぱたと外で足音がしたので見てみたら、私と同い年くらいの子供が二人、庭で遊んでいました。
二人はとても良く似ていて、兄弟みたいでした。
声をかけると、その二人は同じ動きで、私に手招きしました。
私は誘い出されるみたいにして、庭に出ていったのです。
そして二人がきゃっきゃしながら走っていく後ろをついていきました。
とにかく楽しそうで、一緒に遊びたかったのです。
兄弟のいない私には遊んでくれるお友達がとても魅力的に思えました。
そうして二人についていったら彼らは急に立ち止まりました。
私もそれにつられて、その場に立ち止まったのです。
兄弟はちらっとこっちを見て、手を差し出しました。
私は戸惑いもなく、その手に捕まったのです。
もしあのとき、祖母の声が少しでも遅れていたら私は兄弟につられて足を踏み出していたでしょう。
しかしその寸前で立ち止まり、次の瞬間に祖母に思いっきり引き戻されて抱きしめられたのです。
はっとしたら、いつもは優しい祖母が「何をしてる！」と怖い顔で怒りました。
このとき、私は昨夜の台風の影響で増水した川の前に立っていたそうです。
もう一歩踏みだしていたら私はその川の中に落ちていたらしいです。間一髪で助かったと聞きました。
祖父母に見知らぬ兄弟の話をしたけど、その近くには子供どころか人っ子一人いませんでした。
今も思いますが、私はきっと危ないところだったのです。
祖父母が住む家の近くでは数年に一度神隠しのようなことが起こるそうです。
もしかしたら私もその犠牲者になるところだったのかもしれません。
おばあちゃんに感謝ですね。