天井裏に続く穴
投稿者:ヲヲッシュ (5)
幼少期の私の家はいわゆる転勤族というやつで、何年かに一度は必ず引っ越しをするような生活でした。
引っ越し先はマンションが多かったのですが、私が中学1年生の時、戸建てに引っ越す事になりました。
戸建てだと自分の部屋が持てるというので嬉しく、引っ越し当日、荷物をまとめて引っ越し先に行くと、その戸建てはかなり新しく、私は大喜びしました。
家の中を探検していると、自分の部屋のクローゼットの天井に、四角い蓋のようなものがありました。
父にこれは何かと聞いてみると配線か何かの工事で屋根裏に行く為のものではないか、と言うのですが、大きさ的に私が入るのがやっとで、大人が入れそうにはないのですが。その時はすぐにどうでもよくなり、自分の荷物を部屋で解いてセッティングしたりしました。
越してきて一ヵ月程でしょうか、眠っているとカリカリ…カリカリ…というような音が天井から聞こえてきて、ネズミでも住んでいるのかな等と思いながらもそのまま眠りました。
翌朝着替える為にクローゼットを開けると、上にあった四角い板が三分の一程ズレていて、屋根裏の暗い空間が見えていました。
不思議に思いましたが自分で閉められる高さではないので、その日はそのままにして学校へ行きました。
その日の学校の帰り道、友達と談笑しながら歩いていると突然お腹の辺りが痛くなりました。痛みはどんどん増していって歩けなくなり、うずくまってしまいました。友人たちが慌てて側にあった薬局に駆け込んで大人を呼んでくれ、その日は救急車で運ばれてしまいました。
夜には母が来てくれ、痛みも治まっていました。病院の先生によると新しい生活でのストレスが出たのではないか、という話でした。
そんな事今まで無かったのにな、と思いながらそのまま帰宅し、着替える為にクローゼットを開けました。
天井の空間を見るとやはり開いたままで、今日の事もあり何だか気味が悪くなりました。夜中に父が帰ってきたので、クローゼットの板を閉めて欲しい、と頼んだのですが父は酔っ払っており、返事はするもののやってくれる様子はありませんでした。
その後も体調不良が何度も続き、あのクローゼットの穴が関係しているような気がしてならず、母に相談することにしました。
それを聞いた母は青ざめた顔になり、すぐに帰ってきた父に伝えました。
その日の父は酔っておらず驚いた後、すぐにクローゼット上の蓋を閉めてくれました。
それから体調不良はなくなったのですが、ある日突然引っ越しをする、と父に言われました。
その引っ越しは転勤の為ではなく、近くの別の物件へ引っ越すという事でした。
私は何だか嫌な予感がしたので理由も聞かずすぐに荷物をまとめ、後日無事に別の物件へ引っ越しました。
父と母は何も言いませんでしたが、数年に渡ってあの家の噂などを聞いてみると、どうやら建ててからすぐにおかしな現象が続く家なので、相場より安い賃料で貸し出しをしているという事でした。
あの屋根裏へ続く入り口は何だったのか、どうして蓋が空いていたのか、あるいは何か住み着いているのか、もう遠くへ引っ越してしまった私にはあの物件がどうなったのかは分かりません。
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