赤ちゃんの見つめる先

私は一度、子供を流産で亡くしたことがあります。

そのことを長く引きずり、落ち込んでいました。

なかなか次のおめでたがなくて、苦労しました。

こうして頑張って不妊治療して、やっと身ごもることができたのが今の子でした。

その子はすごく旦那に似て、愛らしい子供でした。

子供ができるまで可愛がっていたペットの犬のタロウも赤ちゃんをすごく可愛がってくれて、寄り添ってくれました。

私はその姿を見て、とても幸せでした。

でも赤ちゃんがたまに不思議な目の動きをすることがあったのです。

私や旦那がいない場所をじっと見つめて、「あー」とか「うー」とか何かを話しかけるそぶりを見せたり、キャッキャって笑うのですよね。

たまにそういうことがあって、よく二人で「そこに何かいるの？」と冗談で聞くこともあるほどでした。

ある日私が一人であやしていたら、また誰もいない方向をじっと見て笑い始めたのです。

「またなの」と私は困ったように笑いました。

だけど、その日気づいたことがあります。

赤ちゃんが見ている方向と同じ方向をタロウも一緒になって見ているのです。

赤ちゃんの視線が動くとタロウの視線も同じように動きます。

まるでそこに誰かがいるかのような動きでした。

私はこれを見たときに、ちょっとだけうっすら寒気を感じました。

だって動物ってよく、視えるとか言いませんか？もしや二人には何か見えているのかと怖くなりました。

子供が掴まり立ちできるようになった辺りに、自然とこの現象がなくなっていったのです。

私はきっとあのとき、流産して亡くした子供がまだ近くにいたんじゃないかと思います。

そしてきっと今は安心して天国に行けたのではないでしょうか。