最後のお別れに
投稿者:ぴ (414)
私は暮れになると、兄弟と一緒によく行く家がありました。小さい頃に私たち兄弟を預かってくれたベビーシッターさんの家なのですが、ずっと交流がありました。まるでもう一組の祖父母みたいに可愛がってくれたので、暮れになるとよくその家に遊びに行っていたのです。
毎年恒例の行事だったのですが、私が成人して実家を離れたら、次第にこの交流は途絶えてしまいました。すごく寂しい気はしたけど、仕方ないと思っていました。「今年は来ないの?」と毎年連絡はありましたが、その度に「ごめん行けそうにない」と何度もお断りしている内に、誘いの連絡も減っていきました。
そうこうしていたら、久しぶりにベビーシッターのおばさんから電話があったのです。そして近くに来ているから会えないかと聞かれました。私は懐かしさと丁度よく休みだったこともあり、近くの喫茶店で会うことにしたのです。久しぶりに会ったベビーシッターさんはすごく老いたのを感じました。積もる話をして、昔の話もして、時間はあっという間でした。
こうして楽しい時間を過ごしていたら、なんとなく今年の暮れはベビーシッターさんの家にお邪魔しようかなと思いました。だけどそう言ったら、なぜか相手に悲しそうな顔をされたのです。そして「そうね、またの機会があれば」と手を振って帰っていきました。
それから数日して、実家にいる兄からベビーシッターさんのお葬式に行ってきたと連絡がありました。聞いたときは、信じられないと思いました。私に会いに来てくれた話をしたら、「そんなわけない」と言われました。なぜなら癌の闘病生活を送っており、病院から出られなかったからと聞きました。私の前におばさんが現れた時期は、もう体が弱って、動けないくらい酷かったみたいなのです。
あの日私に会いにきてくれたおばさんはもしかしたら生身ではなかったのかもしれません。最後のお別れの挨拶に来てくれたのかもと思っており、私はだったらもっと話したかったと寂しくなりました。今年の暮れはベビーシッターのおばさんには会えませんが、おじさんに会いに行こうと思います。もう後悔はしたくありませんから。
お別れを言いに尋ねて来たにですね。