不思議な声

これは私が、子供の頃の話です。

新しく家を建て、そちらに引っ越して間もない頃のこと。

その日は土曜日でした。

当時の小学校は、土曜日は三時間授業で下校することになっていました。

なので給食はなく、お昼は家に帰ってから食べるので、土曜日はいつもお腹を空かせて下校していました。

その日もお腹ペコペコだった私は、早くご飯が食べたくて、急いで家に帰りました。

元気よく、「ただいまー！」と挨拶しながら玄関を開けたところ、リビングから「おかえりー」との返答がありました。

「お腹空いた。ご飯食べたい！」と、ランドセルもそのままにリビングへ向かいました。

が、そこにいるはずの母の姿がありませんでした。

確かに返事はあったのに…と、不思議に思い、家中母を探してみたのですが、結局、母はどこにもいませんでした。

母が現れたのは、その十数分後。私がリビングでテレビを見ている所に、外から帰って来たのです。

ご近所に出掛けていたということですが、だったら、あの時私が聞いた声は、一体誰のものだったのでしょうか…。

よく考えてみれば、「おかえりー」という声は、母の声よりも高く、女性らしい（と、言っては母に失礼かもしれませんが）声色だったように思います。

あの声は一体なんだったのか、今でも思い返すと不思議です。