未来からの電話

これは実際に経験した話

中学生の頃、夏休みに溜まった宿題を片付けるため、よく友人と2人で図書館に入り浸っていた。
宿題をやる、というのは名目で実際には自転車で図書館に集まって、涼しい館内でだらけていることが多かった。
夏休み終盤になり、そろそろやばいということで各自離れた場所で宿題を片付けることになった。

数時間後、昼前に携帯電話(当時はガラパコス携帯電話)に友人から呼び出しの電話が入った。
昼飯休憩かな、と思い集合場所で先に待つ友人の下に向かったところ、妙なことを言われた。
「さっき俺に電話したよね、出れなくてすまん」

こちらからは電話していないので、身に覚えがないことを伝えると、友人は着信履歴を見せてくれた。
そこには確かに自分からの着信履歴が残っていた。
しかし、自分の携帯電話には発信履歴はないことを見せると、「脅かそうとしやがって、発信履歴消したんだろ」と信じてもらえなかった。

友人も冗談だと思っているようだし、変なこともあるもんだな、間違って発信してしまったのかな、くらいにしか考えていなかった。
ところが、その着信履歴をよく見ると違和感があった。

着信時間が、今日の18時38分になっている。
つまり、時間が未来から電話がかかってきたことになっている。
それを見た時はさすがに気味が悪かったが、そもそも変な体験をしているので、2人ともまあいっか、くらいに考えていた。
その日は昼飯を食べたところで集中力の限界が来てしまい、夕方まで遊んで解散となった。

その日の18時38分に、友人は事故にあった。
自動車に追突され、自転車ごと吹っ飛んだらしい。
幸い命に別状はなかったが、友人はしばらく入院となった。

事故に遭った時間は、昼前に友人が自分からの着信を受けた時間と同じだった。

なぜ、その時間が正確に分かったか、というと自分と友人は事故に遭う瞬間まで通話していたから。
自分にも友人から着信があったため、自宅から折り返しの電話をかけていたところだった。
友人は外におり、自転車に乗ってこれから帰宅するところだった。

友人は自分には電話をかけていない、と昼間とまったく逆のことを言いだした。
そんな馬鹿な…と自分の着信履歴を見ると18時45分に友人からの着信履歴が残っていた。
その時は確か18時30分前後で、もしかして携帯電話が壊れているのか？と思った矢先に、電話口からすさまじい激突音が聞こえた。
友人に応答を求めても、返事はなく風が通るような音だけが聞こえていた。
解散場所から友人宅までの道沿いのはずだと考えた自分は、自宅から飛び出した。

自宅から飛び出したその瞬間、自分は自動車に激突されてしまった。
後から分かったことは、その時間は18時45分だったこと、2人仲良く入院することになったこと、2人をひき逃げした車は同一だったこと、
そしてその車は乗り捨てられ、犯人は未だに見つかっていないということだった。