私の場所
投稿者:シラス (1)
怖い、とは違うそんな話かと思いますが、是非聞いてください。
私は高校に入学すると同時に学校の目の前にある寮へと入寮することになりました。少し良くない話が多い寮でした。
部屋のメンバーは1つ上の先輩と、同級生の子と私。入口から入って両サイドに二段ベットが1つずつと、その奥に一段上がって、畳が3畳あるだけのシンプルな部屋です。正面には大きな窓が1つあります。私はプラスチックの3段引き出しを窓の右側の角に置きました。ベッドは入って右側の下の段が余っていたので使うことにしました。
集団生活をしていれば、必ず誰かが寮にいて誰かの気配がします。夜だって必ず3人です。でも、それは平日の間だけ。休日になれば実家に帰る生徒の方が多く、寧ろ残っている生徒の方が少ないのです。
その日は休日でした。午前中は知り合いと野球部の応援に行き、お昼からは学校での作業があったので、寮へと帰りました。夏休みの近づいていた頃で暑さで疲れてしまったので、私は約束の14時までの2時間で昼寝をすることにしました。
『ずんっ…』と足に均等に重さを感じて目が覚めました。心当たりがありました。実家に帰った時の朝方にも体験していました。『スーー』ってその重みは、なんの障害もなく足から頭に向かって滑らかに向かってきます。向かってくるというよりも、重さを感じる部分が増えていく、感覚です。
とはいえ、2回目です。正体が気になる、という興味心すら出てきています。私は見てみようと思い、重さのくる方を眼だけ動かして見ていました。
『…だめだ!』
直感的に私は目をつむりました。怖くなったというより、黒い陰に目のついた様な存在が頭の中に見えたからです。実際は違うものかもしれないです。でもまだ私には、そのイメージのようなものに耐性がなく、精一杯の防御をしました。
どのぐらい目を瞑っていたでしょうか。じっと耐えていた時、気がつけば男性の声が聞こえてきました。誰かと考えていましたが、聞きなれない声です。ましてやここは女子寮。男性の声が聞こえるはずありません。それに気づいてすぐに目を開けました。
私の寝ている右側の通路。女性が立っていました。気づけば声も女性の声へと変わっていました。彼女は体を此方に向けていましたが、窓の方を指差してそちらをじっと見つめていました。誰なんだろうと不思議に思いながらも、徐々に何を言っているのか耳に入ってくるまで落ち着いてきました。
『私の場所…貸してあげてるの…』
彼女は間違いなくそう言っていました。その言葉を聞き、怖くなって私はまた目を瞑ってしまいました。だって、彼女の指を指していた方は、私の荷物が置いてある場所です。
コンコンというノックの音で目が覚めました。
『おきてるー?』
同じく作業を担当しているクラスの子です。
『ごめん、寝過ごしちゃった…すぐ準備する!』
私はすぐに出かける準備をして、部屋を後にしました。
その後も私は彼女の場所を借りていましたが、彼女が私の目の前に現れることはありませんでした。
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