去年の夏休みのことです
私は中学3年生で夏休み前にバレーの引退試合を終え、新たに柔道部に入部しました。夏休みの練習はバレー部の頃の数倍の練習量でヘトヘトになりながら帰るのが日常でした
ある日珍しく午後からの練習で午後2時から夜の7時まで練習をしました。そこから更衣室で同期たちと一緒にだべったりしていたら校門を出る頃にはもう7時半すぎ周りは、かなり暗くなっていました。
学校から駅までは約20分ほどありそこから皆JRに乗って各々が降りていくという感じでした。僕も途中の駅で降り地下鉄に乗り換えをします。
ですが乗り換えで駅の改札を出た時とても奇妙な雰囲気を感じました。僕はその奇妙な雰囲気の原因を理解できませんでしたが歩いているうちに理解しました。人がとても少ないのです。僕が降りる駅はかなり大きな駅でどの時間帯でも人がたくさんいるのが当たり前でした。ですが今日に限っては人が少なく数えれるほどに少なかったのです。
まぁ夜だし人が少ないだけだろうと思い地下鉄の改札を通り構内へ。その駅は終点駅でホームには電車が1本、出発時間を待っていました。
僕はいつもどおり進行方向から一番後ろの車両の座席に座りました。人は数人座っていました。
そして出発を知らせる音楽が流れ電車が出発しました。
ですが何かおかしいのです。それはすぐに気づきました。
進行方向から一番後ろの車両に乗ったはずなのに進行方向とは逆方向、つまり壁であるはずの方向に電車が動いているのです。
流石にただ事ではないと思い周りを見渡したりしましたが乗客は全員下を向いて表情は全くわかりませんでした。そして怖くなり母親にLINEを送ろうとしても圏外。完全に外部から遮断された空間に閉じ込められたのです
すると突然車内放送が流れ始めました。ですが砂嵐のような音ばかり大きく肝心の車掌の声はとぎれとぎれで何を言っているか全くわかりませんでした。
ただ、その車掌の声は生気を感じない死人のような声でした。まるでこの世から消された死人。そんな漢字でしょうか。
そんなふうに怯えていると車内放送がプツリと消え今度ははっきりと車掌の声が聞こえました
「本日は地下鉄〇〇線をご利用いただき誠にありがとうございます。当列車は終着駅行きです。忘れ物などございませんようお気をつけください」
それを聞いて終着駅とはどこなのか。なぜ駅名ではなく終着駅なのか。謎が更に恐怖を駆り立てました
僕はこのままではもう帰れないと思い車両を変えようと連結部のドアを開けようとしました。ですがドアはびくともしません。何度やっても変わらないと諦め次は運転席の方に向かいました。車両の最後尾だったこともありカーテンは上げらられており運転手の姿が見えました。
運転手も同じく少しうつむきがちで前を見えているのかはっきりしない感じでした。そして操作盤に目をやるとなんと時速は120km。ありえない速度で走行していたのです。電車の外は地下なので真っ暗でどんだけの速さで移動しているかわからなかったのでとても驚きました
普段の速度は時速70kmほどなのでその異常さがわかると思います
あまりの速さに驚いていると、とても遠くに小さな光が見え始めました。僕はこの時直感しました
「この空間から抜け出せる」と。
ですが、だんだん近づく光とともに目の焦点が合わなくなり光が視界の半分ほどを照らしたところで意識がなくなりました
気づいた頃には乗り込んだ駅に停まっている電車の中にいました。
気を失った後のことは何も覚えていません。どうやって元の駅に戻れたのかあの現象は何だったのか。1年たった今でもあの日のことは忘れられません。そして二度とあの摩訶不思議な電車に乗ることはありませんでした。
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