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心霊

皐月さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

雨が降る中で聞いた声
短編 2021/02/01 21:31 3,657view
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私が、友人とキャンプに行った時のことです。天気予報では晴れだったのに、夕方から次第に曇ってきて、やがて大粒の雨が降ってきたんです。
テントの中にいても音がひどくて、近くに川もあったことから、私も友人も急いでテントを出ると、近くのトンネルまで走ったんです。
滅多に車のこない場所だから、しばらく雨宿りさせてもらおうと思ったんです。

人が大勢いるようなところは苦手だったので、あえて人が少ないところに来たのですが、それが裏目に出たような気がしました。
微かにライトがついていたのですが、周囲は薄暗く、私も友人もなにか話していないと落ち着きませんでした。雨の音に混じり、雷まで鳴り始めて、私も友人もキャンプに来たことを後悔したんです。

不意に、友人が誰かの気配を感じると言うのです。
でも、振り返っても誰もいません。
私は、暗いからそう感じるだけだと言って友人を宥めました。
彼女は、どこか神経質なところがあって、わずかな音や異変に敏感なのです。

それからも、何度も友人は足音が聞こえたとか、気配がしたとあんまり言うので、私はついイライラとしてしまったんです。

私は、幽霊などの類いの話は苦手で、オカルト的な話は避けてきたんです。
なのに、友人があんまりしつこく言うので、ついケンカになってしまいました。友人は、悪気はなかったと言って、私はわざとそういう話をするんだと友人をつい責めてしまったんです。
それから、しばらく口をききませんでした。
こんなことなら、キャンプになんてこなければ良かったと思ったほどです。ですが、時間がたつにつれて、どんどん外は暗くなってきて、私は不安になってきました。

私は、さっきまで口をきくものかと思っていた友人に、振り向かないまま、「寒いね」と言いました。
なにかきっかけがあれば、と思ったんです。すると、「そうね」と返ってきました。雨の音の中、とても小さな声でした。
元気がないその声に、彼女も気にしているんだと思って、私は反省しました。
そこで、私は彼女を励ますために、いろんな話をしたんです。

学生時代に同じ人のことを好きになって気まずくなったことや、一緒に山登りをした時のことなどを話しました、
気がつくと、自然に不安感は消えて、暖かい気持ちになりました。

せっかくのキャンプなのに、天気が悪くなって、気分もイライラして、つい八つ当たりしてしまって、悪かったなって思ったんです。

「さっきはごめんね。ちょっと言い過ぎちゃった」
その言葉に対しての返事はありませんでした。まだ怒っているんだと思って、私は何度も謝りました。
と、不意にあることに気がついたんです。

そういえば、来た時に分かれ道があったことに気がついたんです。
右と左、どっちに行けば帰れるんだろうと思い、どんどん不安になってしまいました。
「ねぇ。あの分かれ道って、右だっけ?左だっけ?」
と私が言えば、小さな声で「左」という声が聞こえました。

すごい記憶力と思って、友人の方を見てみたら、なんと彼女はイヤホンで音楽を聴いてるんです。いつのまに?と思って、彼女の肩を叩けば、不満そうにイヤホンを外しました。
「なんで左ってすぐにわかったのよ」
と、言えば彼女はキョトンとして、なんのことかと聞くんです。

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コメント(2)
  • 親切な幽霊で良かった…

    2021/02/01/22:43
  • 優しい幽霊の話は妙にほっこりする

    2021/02/07/03:20

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