古家の泣き声
投稿者:menyumpahi (2)
あれは中古物件に住んでいた僅か二週間の出来事だ。
私は親戚の伝手で築四十年ほどの古家を月5万で住まわせてもらう事になった。
私の親戚は、財産整理を機に管理費や固定資産等の出費に悩んでいたらしく、地元の不動産屋に古家を売り家として掲載していたが3年経っても買い手が見つからず、結局、親戚中に誰か中古物件を買う宛がないか聞き回っていた。
そこで職場から車で20分圏内であり、尚且つ賃貸住まいで月8万を出費していた私は賃貸よりは節約できると思い、買い手が見つかるまでの間家や庭の手入れや管理をする代わりに安く住まわせてもらう事になったのだ。
古家と言っても6畳3間二階建てで小さいながら庭もある。
隣人トラブルや騒音に気を使わなくて済む分、5年も済めば充分すぎるほど節約できるだろう。
それに実際に生活する居住空間は一階の2間くらいで、二階は物置にでも使えばよい。
それなりに気に入れば将来的にこの家を購入してリフォームしてもいいとさえ思った。
又は、自分でDIYをして楽しむのも一興だろう。
そんなわけで私が親戚の抱える古家に住まう事となり、引っ越し等を済ませてから二日が経過したある日の事。
仕事を終え帰宅すれば、何やら玄関先だと言うのに強い違和感を覚えた。
第六感と言うのか、得体の知れない何かの気配がゾワゾワと肌を通して鳥肌を立てる。
とは言え、このまま外で右往左往していても進展がないので、私は意を決して家へ入った。
しんと静まり返った消灯中の廊下を見据え、出かける前とさして変化のない家内を目視した後、ふと脇目に備え付けられた二階へ上がる階段を見上げる。
当然、真っ暗闇の最奥に何があるのか見えるはずもなく、私は漸く電気を点けた。
やはり一人で一軒家に住むと、それなりに臆病になってしまうのだろう。
私はきっと人恋しいのだと自答し、今夜も一人寂しく出来合いの弁当や総菜をレンジで温め、テレビ番組を流しながら晩御飯を済ませた。
唯一の失敗は、浴室の下見をするべきだったことだろう。
随分と使い込まれたタイル張りの浴室は、床は冷たく水捌けが悪い上に隙間風まで入ってくる。
湯船に浸かろうとひとたび出てしまえばあっという間に凍えてしまいそうだ。
そんなことを悔やみながら湯船に浸かり大きく息を吐いていると、何やら「ドスン」という大きくも小さくもない、ただ本当にドスンと形容した音が僅かに聞き取れた。
どこかで誰かが車のドアを閉めたのか。
はたまた、何か重たいものを床に落としたか。
この時の私はあの音が家の中から聞こえていたことなど微塵も思いもしなかった。
この家に住み始めて四日後、私は未だに帰宅すると妙な視線を感じていた。
そして、この日はリビングとして活用している部屋でうとうとしていると、「ズリ……ズリ……」といった何かを引きずる音で目が覚めた。
何の音だ?なんて耳を澄ませてみると、発情期に耳にするような猫の鳴き声がどこからか聞こえてくる。
短い鳴き声が聞こえた直後、何かを引きずる音も消えていたので、私は大きく欠伸をして寝る支度に入るため洗面所へ向かう。
ここもまた古びた洗面台と露出した壁掛けの鏡があるだけの質素な造りで、いざ住んでみれば至る所をリフォームしたいと考え直すには充分な現実を見せつけられた。
まあ、その分格安なので貯蓄は捗るのだが。
いや怖いよ
面白かった!
この投稿者さんの名前って…
気になって翻訳しちゃいました
インドネシア語で呪いみたいな意味があるようですね
怖い…
バイオハザードヴィレッジ(バイオ8)のベネヴィエント邸に出てくる赤ちゃんを想像してしまった…