ドッキリの真犯人
投稿者:赤壁二世 (13)
ある夜のこと、俺が原付で河川敷を走っていると、前方を照らすヘッドライトの光の中に何かが飛び込んできた。
俺は驚きすぎて声が出なかったものの、即座にブレーキをかけておずおずと目の前のモノを凝視する。
一見して猪程度の胴体からして本物の猪かと思ったが、長い手足がカクカクしながらイソギンチャクみたいに蠢いていた事から鹿とも見間違えた。
しかし、ヘッドライトの光を受けたそれが宛ら貞子のようにプルプルと震わせた足腰を立たせようとしている事に気づき、俺は卒倒しかけた。
よく見れば、焦げ茶色のワンピースのような丈が広がった服を来た人間だと分かり、俺は原付に跨がった状態で足先だけを器用に動かして後退する。
あの化け物は関わるとヤバイ、そう思った。
しかし、原付の車体がガクンと跳ねたので、俺は吃驚しすぎてパニックになりながらも、重圧を感じた後ろを振り向いた。
そこには、バイクの後部に跨った、白いワンピースを着た腰元までかかる前髪を垂らした女が居て、俺は外だという事を気に留めず、
「ひいぃぃぃぃい!?」
と、情けない悲鳴を町中に轟かせる。
前門の貞子、後門の貞子。
これほど絶望的な状況はない。
俺は原付を乗り捨てようと片足を上げたものの、バランスを崩してそのまま転倒。
尻餅をついたまま後退るも、河川敷だというのを失念していたせいで、斜面をひっくり返りながら転がっていった。
「あっ、○○大丈夫か!?」
すると、転がっている最中に聞き慣れた声を意識の遠くに捉えながら、俺は草っぱらに仰向けに倒れていた。
もう少し勢いがあれば川に飛び込んでたなと思いながらしばらく放心していると、俺が河川敷の斜面を転がっていく様を見届けた貞子達が慌てて駆け寄ってくるというシュールな光景を眺める。
「生きてるか?」
「やりすぎたわ、すまん」
頭を下げる二人の貞子が長髪のカツラを取ると、彼等が大学の友人だとすぐにわかった。
ただ、衣装が女性物だったので女かと思ったのと、白地の化粧を顔面に塗りたくっているせいか、極めてキモい。
焦げ茶色の方がFで、白ワンピースがTだ。
Fが手を差し出したので俺がその手を掴むと、力一杯引き寄せられた。
立ち上がった俺の衣服についた汚れを二人がはらってくれるが、先ずは状況説明を最優先で要求した。
「で、何これ」
「ごめん、ドッキリ」
「これカメラね」
Fが謝りながら頭に巻き付けた小型カメラを指先で見せつけ、Tも同じカメラを付けていると頭を見せつけてアピールしてくる。
まさかYouTubeに動画を載せないだろうなと問い質すと、二人はどこか遠い視線を空に向けていた。
「マジで動画は拡散せんでくれよ。てか、肘擦りむいたわ」
ドッキリの仕掛け人を覆う......
こわ…
好き