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心霊

だれパンダさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

飛び降り自殺者と目が合ったら・・・
短編 2021/01/25 23:10 4,970view
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私が働いていた会社のビルはよく飛び降り自殺者がでるので有名でした。
会社に勤める人間はもちろんのこと、近隣の住民やわざわざ電車を乗り継いできた主婦まで、何故か職場のビルの屋上から自殺するのです。
そのせいで通称自殺ビルと呼ばれ、皆に気味悪がられていました。
ビルの屋上には高い金網が張り巡らされているのですが、自殺が目的で訪れた人々はそれを乗り越えて身を投げます。
自殺を決断するまで追い詰められた彼らももちろん気の毒なのですが、不運なのは宙を落ちていく彼らと目が合ってしまった、関係ない人々です。

「聞いてよ、こないだ目が合っちゃったんだ」
ある時、私と同じ部署の同僚がそう嘆いていました。話をよく聞くと、先日ビルから飛び降りた中年男性とばっちり目が合ってしまったのだそうです。
その中年男性は私の会社に長年勤めていたのですがリストラにあい、絶望して身を投げたのだそうです。
「ばっちり見ちゃった、最悪」
仲間と面白おかしく騒ぐ同僚を不謹慎だと思いましたが、もともと親しい仲でもない為、その場では何も言わずにいました。

同僚は悪い人間ではないのですが何かと悪ノリしやすい傾向があり、顰蹙を買うこともありました。
ですが営業成績は優秀で愛想もよかったので、上司には可愛がられていました。

一か月後、私はオフィスでコピーをとっていました。
その日は例の同僚が無断欠勤しており、上司が怒っていました。
コピーをとりおえて顔を上げた時、窓の向こうを黒い人影が落ちていきます。
同僚でした。
彼はひどく驚き慌てた顔をし、口をパクパクさせ何かを伝えようとしていましたが、その言葉を読み取る暇もなく落下。
アスファルトの地面で墜落死しました。

自殺者と目が合ってしまったショックは大変なものです。
何せ私が最後の目撃者なのです。

同僚の自殺を知り、部署は騒然となりました。
というのも、彼が自殺する動機にまったく心当たりがないからです。当然遺書も残されていません。
仕事は順風満帆で恋人との仲も良好、同期で一番の出世頭と目されていた青年の突然の自殺は社内に波紋を呼びました。

同僚の葬儀の日、お焼香を上げに行った私は、宙を滑り落ちていった彼の口の動きを思い返しました。
「次はお前だ」
彼は確かにそう言っていたのです。

同僚は死者に呼ばれたのでしょうか。死者を貶める言動をとったから呪われたのでしょうか。
上司の覚えもめでたく出世を約束された若者に、長年会社に尽くした挙句あっさりリストラされた男性が嫉妬し、道連れにしたのかもしれません。
自殺者と目が合うと理由もなく飛び下りたくなる、もしそんな事が本当にあるなら自殺のリレーです。
無力な私はただ、同僚の予言が実現しないように注意深く日々を過ごすしかないのでした。

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関連タグ: #電車
コメント(3)
  • 自殺って死んでからも迷惑だしダメ絶対。

    2021/01/26/00:55
  • 地獄門は広い。いつでもいける。急いで行く必要はない。ギリギリまで生きよう。地獄は誰でも受け入れる寛大さを持っている。慌てなさんな、ギリギリのちょい先まで生きなさい。どうにもならんくなったら、門を開いてくれるよ。よく頑張ったね。

    2021/01/26/12:58
  • 落ちていく速度ってだいぶ速いよね?そんなはっきり目が合ったり、なんて言ってるかわかるものなの??

    2021/01/28/17:05

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