蛇殺しは祟られる

私が子どもの頃の出来事です。

私は物心付いた頃から虫や爬虫類が大の苦手でした。ただ苦手なだけならいいのですが、庭や道端で見かけるたび謎の憎悪すらかきたてられました。
無神経な両親は「蛇に丸呑みにされた鳥の生まれ変わりじゃないか」と茶化します。

小学4年生の頃、庭の片隅を這っている蛇を見付けました。
ほうっておけばよいのに……異常に潔癖な私は自分の生活圏内に天敵がいるのに我慢できず、物置の鎌を持ってきて蛇に突き刺しました。可哀想な蛇は頭を切り落とされて絶命します。

「首と胴が離れてもまだ動いてる。きもちわるっ」

その夜、私は高熱を出しました。
翌日……熱が下がるや異様な空腹に苛まれ、冷蔵庫を開けました。おいしそうな卵があります。見てると涎が湧いてきます。一個、二個、三個……次々丸呑みにします。止まりません。

ごくん、ごくんと卵を嚥下する私を見るなり台所に入ってきた母が絶叫しました。

「あんた何してんの、やめなさい！お父さんちょっときて！」

両親に取り押さえられ、即座に医者に連れていかれました。しかし異常なしの診断を下され、次に拝み屋を頼ります。

「コイツは蛇の祟りだ。蛇をいじめ殺したからバチが当たったんだ」

お祓いをしてもらってどうにか元に戻りましたが……正直今もまだ、生卵が大好物です。