隠しリンクの先の「絵画展」
投稿者:赤壁二世 (13)
インターネットで怖いURLが流行していたのを知っているだろうか。
代表的なのが赤い部屋とか、死のホームページだとか、とにかくウェブ上にも心霊の類いは存在するってことだ。
俺も一時期は精神が病んでて自殺サイトやホラーサイトを見て回って、とあるホームページで隠しリンクを見つけたからタップしたことがある。
「絵画展」と大それたタイトルのサイトは、俺の小さなスマホ画面いっぱいに黒色の背景を埋めつくし、白の字体で中央に「あなたは招待されました」と書いてあるだけで、とんだ肩透かしだった。
それでも、何気なしに拡散する電光色の滲みを数十秒眺めていると、文字が切り替わり、赤い文字で「部位を選んでください」と指示が浮かぶ。
続けて市松模様を連想させるモザイク調の均等な四角柄が画面に広がっていくんだが、注意して見れば、その一つ一つのマスの中に画像が差し込まれていることに気づく。
一つは人の顔。
隣のマスには人の手。
或いは胃腸、心臓、右足、耳、など様々な人間の部位と思われる画像が展開されている。
一見スプラッター映画のワンシーンを切り取って散りばめたような画像を見て、俺は戦慄と好奇心が撹拌された奇妙な気分に陥り、「部位を選んでください」の意味を考えた。
自殺サイトやホラーサイトを経由しているということは、ネガティブに受け取ってよいだろうと判断し、恐らくは選択した部位のグロ画像か動画が表示されるドッキリ系悪戯サイトだろうと考えた。
長年こういうサイトを閲覧していると嫌でも経験する。
俺もこれまで何度か引っ掛かって悲鳴を上げたものだ。
自分の嫌いな部位を選択すれば良いと考え、俺は顔にコンプレックスがあったから迷わず顔が表示されたマスをタップした。
誰とも知らない血の気ない薄気味の悪い男性の顔が拡大され、数十秒とじっくり見せられた後、男の顔は悲痛なものへと一変。
この世のものと思えない重低音の悲鳴がスマホのスピーカーから溢れ、熟したトマトが崩れるように男の顔面の肉が刮ぎ落ちていく。
「うえぇ…」
そこまでグロ耐性がついていない俺は、嘔吐感に苛まれ目を細めた。
仕舞いには目玉さえ腐り落ちる柿のように飛び出したかと思えば、画面は再び暗転し、中央には「続きはあなたの夢」と、次回の予約を受け付けたかのような文面が浮かびあがった。
不思議な事にページは自動的にブラウザバックされ、前に見ていた自殺サイトへ強制的に戻されたので、俺は最初にあのサイトを発見した時のように隠しリンクをタップしてみる。
しかし、何度タップしてもページを読み込むことがなかった。
もしかしてと思い、隠しリンクがあった場所をドラッグしてみるがやはり何も浮かび上がらない。
自動的にブラウザバックしたと錯覚しただけで、実際は中身が同じ別サイトに飛ばされただけだと理解するにはそう時間が掛からなかった。
「手の込んだサイトだなあ」
何となく、他にも面白い仕掛けがありそうだと踏み、このサイトをお気に入りに登録した。
そんな事があったのは、たぶん二週間くらい前で、俺は既に記憶からすっぽりと抜け落ちていた。
そう、ある日夢をみたんだ。
「絵画展」と名付けされたサイトでみた男の顔が崩れ落ちる夢を。
忘れていた光景をまざまざと思い出し、気がつくと俺は真白の空間に地面と壁との境界線の黒が広がる絵画展の回廊に立たされていた。
どこまで続くのか不明な迷路のような廻廊を歩いてみれば、以前スマホで見たような、人体の一部が描かれた額縁が壁にズラーッと展示されていて、まさしく絵画展に飾る作品のように展示されていた。
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