いじめの代償

私は子供の頃に、いじめをしてしまったことがありました。

もちろん主犯格などという大それたタイプではありません。

どちらかというといじめっ子の取り巻きという感じの立ち位置でした。

それでも酷いことをしてしまったという後悔の気持ちは大きいです。

だって私はおそらく主犯格よりもいじめの被害者を傷つけてしまった自覚があるからです。

そう私とその子は最初は友達だったのです。

いじめの始まりはクラスの目立ちたがりの女子が気に入らない子をいじめるというお決まりのものでした。

園子というその友達はすごくおとなしく、口数の少ない子でした。

体格もほかの子たちよりも小さく、ちょっと発育が悪かったです。

それが災いしたのか、いじめっ子の女子の標的になり、それだけの理由でいじめが始まったのです。

最初は私も突然始まったいじめに困惑しました。

周りの子に「やめよう」と声をかけたこともあったし、友達である園子を庇おうとしたこともありました。

でもいじめられっ子を庇うと、だんだんと自分の立場も悪くなっていくんですよね。

そのせいで、いじめっ子に目をつけられて、私まで筆記用具やノートを隠されたり、消しゴムをゴミ箱に捨てられたりなど、酷いことをされました。

次第に私は自分までいじめられてしまうことが怖くなったのです。

だから園子を庇うのをやめて、いじめっ子側についてしまいました。

園子のショックを受けた顔は今も思い出して辛くなります。

今となっては大きな後悔です。

園子は私の裏切りにさらに傷ついて登校拒否になり、学校を転校していきました。

いじめはその後も標的を変えて続きましたが、私はその子の取り巻きの一人になることで身を守ったのです。

自分でも最悪だと思うけど、それでもその頃の私には自分の身を守ることで精いっぱいでした。

私はこのことをしばらく引きずっていました。

大人になっても、なんだか後味が悪くて、忘れられなかったです。

だから、学校を卒業し、就職した会社で同じようないじめを体験したときに、あの日の記憶が蘇ってきたのでした。

残念なことに大人になってもいじめって無くなりません。

無くならないどころか、酷く捻じれて悪化して行われるようになります。

より悪意に染まった大人のいじめのターゲットは一緒に入社した同僚でした。

園子のようにちょっととろくさいその子はいじめの標的になり、私は昔の悪夢を思い出したのです。

トイレで隠れてこそこそ嫌がらせを受けたり、集団で聞こえるように悪口を言われたり、朝の報告会で酷く恥をかかされたりして、その社員は見る間に元気をなくしました。

その姿に私はすごく同情しました。