友引人形の怪
投稿者:misa (11)
私の田舎には変わった風習がありました。友引の日にお葬式があると、故人のお棺に人形をいれるのです。
人形の種類はさまざまで、昔ながらの市松人形から市販のソフトビニール人形、木彫りのこけしと統一されていません。
母に理由を聞いた所これは友引人形といい、亡者が知人を連れて行かないように身代わりを捧げる風習なのだそうです。
私が小5の頃、ご近所のY田さんが脳溢血で倒れました。
Y田さんは友引の日に亡くなったので、生前彼女が大事にしていたこけしがお棺に入れらました。
私も親に伴われ葬式に出席したのですが、じっとしているのが苦手な性質だった故すぐ退屈し、家の中をうろうろしていました。
まだ葬式が始まる前とあり、故人が眠るお棺のそばには誰もいませんでした。
この中にY田さんがいるんだ……。
なんだか不思議な気持ちになってお棺に近付いた時、コトンとかすかな音が鳴りました。
なんだろうと膝を詰めて接近すると、コトンコトンとまるでノックのように音が続きます。
誰かが内側から蓋を叩いているのです。
Y田さんが生き返った!
びっくりした私は、即座に大人を呼びに行きました。
血相変えた私の報告に大人たちは半信半疑ながら、念の為蓋を開けて中身を確認しようと意見が一致しました。
「あっ!」
蓋を開けた瞬間、大人たちの表情が凍り付きました。Y田さんの隣に寝かされたこけしの首がとれていたのです。
ひょっとしたらこの首が跳びあがっていたのでは……。
以来、私はこけしが大の苦手になりました。
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