化粧品を見ていた男の霊

大学生の頃にコンビニでバイトしていたのだが、その時に後輩バイトから聞いた怖い話。

後輩バイトを小宮さんとする。

小宮さんは霊感はあまりないが、小宮さんの家族が幽霊を見たことがあるという話は聞いたことがあった。

その小宮さんがコンビニでバイト中にとんでもないものを見てしまったという・・・。

どちらかというと強気で怖いもの知らずの小宮さん。

何があっても淡々と作業をして、先輩から注意されてもあまり気にしないくらいのちょっと生意気なところはあった。

小宮さんともうひとりの後輩バイト中本さんと私の３人でシフトに入っていた時のことだった。

夕勤だったので、時間は２０時ちょっと前だったと思う。

私はトイレ掃除のために売場から離れることになった。

トイレ掃除を終えて売場に戻るとギャーギャーと騒ぐ声が聞こえてきた。

急いでレジまで行くと、小宮さんと中本さんが真っ青な顔で叫んでいた。

騒ぐとお客さんに迷惑になると思ったが、その時は店内にはひとりもお客さんはいなかった。

そこで、小宮さんと中本さんに何があったのか聞いてみることにした。

「出たんですよ！出たんです！」

「男の幽霊！金髪の男が出た！」

「化粧品が置いてあるところに黒い人影が見えたんですよ！」

「それで、防犯カメラを覗いてみたら、金髪のヤンキー男がいたんです！」

「お客さんかなって最初は思ったんですが、違ったんですよ！」

「途中で消えたんです！」

「ヤンキー男の幽霊が化粧品を見てたけど、いつの間にか消えたんです！」

小宮さんと中本さんが必死になって幽霊を見たと主張してきたのだが、私はその内容に怖いというよりは何で？と思ってしまった。

ヤンキー男の幽霊がなぜ化粧品を見ていたのだろう。

女の幽霊なら分かるが、なぜ男の幽霊が化粧品を・・・？

本当にヤンキー男の幽霊だったのか確認してみた。

間違いなく男の霊だったと主張する小宮さんと中本さん。

２人が同時に見たんだから、見間違いではないとは思う。

しかし、まさかヤンキー男の幽霊が化粧品を見ていたなんて・・・その方が気になってしまった。

「防犯カメラを確認しようか？」と２人に尋ねてみたところ、「怖いから嫌です！」と２人とも声を揃えて拒否してきた。