どうしても家に帰れない

家族で車に乗り、外出した日の出来事です。
当時はカーナビが付いてない車でした。
父が車を運転し、母が助手席に、私と妹が後部座席に座っていました。
いつもは日中に通る山道でしたが、その日は夜の20時を過ぎていました。
妹は後部座席で寝ていて、父と母、そして私が他愛のないおしゃべりをしていました。

その山道は一本道で、まっすぐ走り続けると20分ほどで家の近くまでたどり着くはずでした。
しかし、その日はいつもとは違いました。

10分ほど走ると父が異変に気付きました。
「この道、いつもと違うな……」
木があるだけの目印もない道でしたが、いつもとはどこか違いました。
20分で着くはずの道のりが、気づけば1時間を超えていました。

それでもまっすぐの道をひたすら走り続けました。
すると、看板が見えました。
書いてある文字に驚愕しました。

『奈良県――』
私たちは三重県の中を走っていたはずでした。
それなのに奈良県と書いてあり、驚きました。

時刻は22時を回っていました。
いつもの道から奈良県には絶対に行きつけないはずなのに……
慌てて大きな道路にまで出て、三重県にある自宅に帰りました。

あの後、もう一度同じ道をたどりましたが、奈良県に行きつくことはありませんでした。

友人にその話をすると、同じようにあの道で県外に出た人がいるという話を聞き、鳥肌が立ちました。

何かに化かされていたのでしょうか。