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不思議体験

ヤン子さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

「私じゃない」ことばかりの奇跡
短編 2021/12/02 14:47 1,814view

これは結婚5年目に起きた出来事です。

私は自宅から少し離れた市街で仕事をしており、夫は地元で念願のお店を開いて間もない頃でした。

年末になり、お互いの仕事もいそがしい中で「体調管理のために」とインフルエンザの予防接種をうけることにしました。
私は接種後、何事もなくすごしていましたが、夫の様子がおかしいことにきづきました。

最初は食欲不振になり、異様に水分をほしがります。
翌日には、食べたら吐くを繰り返し始めました。
「病院に行ったら?」と言っても、自身のお店の予約が一杯で休めない. . .と、全く聞き入れてくれません。
3日が経つ頃には、顔が土気色になり会話が噛み合わなくなりました。

「オカシイよ!病院行こう!」と嫌がる夫を連れて夜間診療にいきました。

待っている間も、嘔吐を繰り返し苦しむ夫。
順番が来て、診察をうけましたが「体調不良の風邪じゃない?」と検査もされず、点滴を打たされて帰されました。

帰宅後も、眠れない夫を介抱しながら朝を迎え、私は仕事の為に家をでなくてはいけません。
どうにも心配で「私休むから、もう一度病院いこう」と夫に伝えるも「朝イチから、御客様くるから」と聞き入れてはくれませんでした。

本人が拒絶していては、どうすることもできず。私は仕事に向かいました。

午前の業務が終わり休憩時間になると、物凄い「不安感」と「夫に今会わないと二度と会話できないかも」「帰らなきゃ」という思いが強くなり、私は上司に説明し帰宅することにしました。

そのまま夫のお店に向かうと、立てずにテーブルにもたれ掛かってグッタリしている夫を発見。

急いでお店を閉めて、救急車を呼ぼうとすると「自分で運転して病院いけないなら、営業を続ける」と言うことを全く聞きません。

条件をのみ、お店を閉めて夫自身が自力で運転。病院に着くと即検査をしてもらいました。

結果は「劇症1型糖尿病」でした。
疲れていたタイミングでの予防接種により、ウイルスが膵臓機能を破壊。インスリンが全く生産されないために、血糖値が「700」まで上がっていることが分かりました。

「今すぐ、ご家族や会わせておきたい人を呼んでください」医者から言われた時は、頭が真っ白になりました。

ICUに運ばれていく夫は、完全に錯乱状態で「てめえ!俺の親に迷惑かけんじゃねえ!」などと罵声を浴びせてきます。

結局、夫の両親を呼びICUに入れたのは数時間たってからでした。

呂律の回らない夫を見て、私は我慢していた感情があふれでました。

「何で言うこと聞いてくれなかったの?」「夫婦なのに、もっと信じてよ。」「私を一人にしないで」大泣きする私を見て、夫はしゃべれない体なのに「ごめんね。絶対に一人にしないから」と言いました。

あれから10年以上。
夫はインスリンの薬を使いながら、私の隣にいてくれています。

あの時、私が感じた感情は夫を助ける為に何か見えない力が働いたのかなと思います。
今思い返しても、私自身が取った行動のはずが「私じゃない」ことばかりしていました。

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コメント(1)
  • 第六感みたいなものでしょうか
    ご主人、ご無事でなによりです!

    2021/12/02/14:55

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