夏休みのウサギ当番
投稿者:古潭 (4)
アルバイトで小学校のプールの監視員をやった時の事です。
夏休みになると小学校のプールは連日子供がやって来て、元気な子供たちと一緒に全力で遊ぶような毎日でした。
いつものように子供達と遊んでいると、50メートルほど向こうにあるウサギ小屋で黄色いTシャツにジーパンを履いた女の子がこちらを見ていました。
少し気になったものの、遊んでと次から次へ襲い掛かる子供達の相手に忙しく、次にウサギ小屋を見た時は中で掃除をしているようでした。
夕方近くになり、プールはお終いとなって子供達を帰らせて私も帰り支度をし、プールの出入り口に鍵をかけた時でした。
あの女の子がウサギ小屋の前の柵に腰かけてこちらを見ているのが目に入りました。
鍵を職員室に返す時に前を通るので声をかけようと近づいていくと、その女の子の異変に気がつきました。
女の子は顔の右半分、特に目の周辺が思いっきりへこみ、右目はつぶれて解らなくなっていました。髪の毛もマダラにむしれて地肌が見えていて、大ケガだと思って「大丈夫か」と駆け寄りました。
すると、女の子が口を動かして何か言っているので、よく聴こうとしたら放送で私の名前が呼ばれ、至急職員室へ来るように連絡されました。女の子を連れて行こうと手を引いたのですが、手の冷たさに驚いて声を出してしまい、女の子も動かないので、ひとまず先生に伝えようと走って職員室に行くと、50代くらいの女性の教頭先生が職員室に居ました。
教頭先生は、「あのコは大丈夫だから。今日はもう帰りなさい」
とニコニコして言いました。
事態が飲み込めずにいると、「あのコは20年近く、夏休みになったらウサギ当番に来るの。当番に来る途中で事故にあったのに。そういう事だから、ね。明日もよろしくね」
と帰されました。
帰宅して落ち着いてからは、怖いというか可哀そうに思いました。その後も1か月近くプールの監視員をしましたが、その女の子を見たのはその時だけでした。
怖いけど切ない
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