幽霊と住んでいました
投稿者:浅蜊 (2)
大学時代、幽霊と住んでいました。
田舎の大学で、下宿先はさらに田舎で、山と川に囲まれているようなところでした。
霊感のれの字も無い私ですが、住まいをそこに移してからは、急に奇妙な体験をするようになりました。
寝ているときに、手や足を引っ張られたり、「おい」「ちょっと」と、ふいに男の人の声で呼び止められたり。
私の部屋に泊まりに来た、同級生、サークルの先輩、後輩、高校時代の友人なども、もれなく似たような体験をして帰っていきます。
「この部屋は出る」というのが、私、そして友人の間で、共通認識となりました。
といっても、ほぼ実害はないので、怖がる者は私含めておらず、逆にネタにされるほどでした。
一番多かった被害は、“お風呂の最中にノックされる”です。
入浴中の友人が「今ノックした?」と顔を出せば、「ショウヘイ(※幽霊の仮名)が出たぞ」と、笑いが起きるほどでした。
実際にショウヘイ(仮)の姿を見た人はいないのですが、友人の祖母が“見える人”で、部屋の写真を見て「男の人がいる」と言っていたそうです。
めったに惨事を起こさないショウヘイ(仮)ですが、一つしでかした事件が「皿割り事件」です。
私が恋人と喧嘩した時、突然キッチン棚の皿が全部落ちて割れました。
当時の恋人は、いま思えばモラハラ気質で、その時も「料理と皿が合っていない」などと文句をたれていました。
今まで耐えてきた私も、その日ついに堪忍袋の緒が切れて、「じゃあ全部自分でやれ!」と大声を出しました。
その瞬間、ガシャーン!です。恋人とはその日以降会わず、結局別れました。
私には、あの時ショウヘイ(仮)が一緒に怒ってくれたように思えて、破片の片づけは全部一人でやりましたが、それも不思議と嫌ではありませんでした。
もう10年以上前の話です。今もあの部屋にはだれか住んでいるでしょうが、元気でやってるかなぁ、などと時々思います。
怖いけど最後はちょっといい話。