二階に住む遊び相手

そんなの信じられるはずがありません。私は確かにあの日、お兄ちゃんと遊んでいたのですから。

それどころかお兄ちゃんは衝撃的な一言を口にしました。

「小さい頃、そんなに俺と遊んでいたっけ？」

私は幼い頃祖母の家で育ち、遊んでくれていたのはいつもお兄ちゃんでした。
ほぼ毎日二階で一緒に遊んでいた筈です。
しかし、その話を聞いていた祖母も、
「お兄ちゃんはそんなに頻繁に遊びにきてはいないよ」
そう告げました。

私は子どもの頃一体誰と遊んでいたのだろう、
唐突に告げられた事実に少しの恐怖心を抱いていると更に、７つ歳の離れた弟と、９つ歳の離れた妹がこう告げたのです。

「おばあちゃんの家に来ると、絶対知らない子に追いかけられて、階段から落ちて、その子が泣きながら謝っている夢見るの」
「俺も同じ夢見る！」

衝撃でした。
そもそも私が階段から落ちた時に、弟も妹も生まれていないので
私が階段から落ちたことは知らない筈です。
夢の内容を詳しく聞いてみると、祖母の家に来ると高確率でみる夢と言っていました。

最初はかくれんぼをしているのも、奥のへやから「誰か」が出てきて追いかけられ、逃げようとして階段から落ちるとこまで、
私が経験した内容と全く同じでした。

ひとつ違うのが、相手がお兄ちゃんではなく
はっきりと姿は見えない「誰か」だったこと。
私自身は階段から落ちた後のことを全く覚えていないのですが、
弟と妹の話では、足だけ見えて泣きながら何度も「ごめんね」「ごめんね」と謝っていると言うのです。

私が幼い頃にいつも遊んでくれていたのは、その「誰か」だったのでしょうか。
遊んでいた最中に私に怪我をさせてしまったことを、兄弟を通じて謝っているのでしょうか。

その子は今も祖母の家の二階で一人でいるのでしょうか。

私は階段から落ちてしまったあの日から、祖母の家の二階へは上がれていません。