ショッピングモールの不思議な夢と「たけるくん」
投稿者:酢こんぶ (1)
不思議な夢の話です。
一年に数回、見覚えのないショッピングモールを舞台にした夢を見ます。
造りはやけにリアルで、一階にはおもちゃ売り場、食品売り場、衣料品売り場などが。二階には文房具売り場と、書店、雑貨屋。それとお化け屋敷のような薄暗くてよく分からない施設があります。
夢はいつもショッピングモールのどこかに立っているところから始まります。その時点で既に「ああ、○○(ショッピングモールの名前)だな」と気付きます。ですが、その○○の部分は目覚めると思い出せません。
そこで、見知らぬ男の子と隠れ鬼をします。特徴らしい特徴もない、普通の小学生低学年くらいの男の子とです。
基本的に男の子と出会った場所で開始されます。おもちゃ売り場で出会えば、おもちゃ売り場で。書店で出会えば、書店で。
内容は本当に普通の、誰もが知る一般的なルールの隠れ鬼です。ただ、絶対に私が隠れる側で、男の子が鬼をやります。
夢の中の私はいつもここで「何が何でも捕まってはいけない」と強く思います。そういう遊びなので当然なのですが、いくら何でも過剰なのではと思うくらいには、強くそう思うのです。
そうして、隠れ鬼は始まります。男の子がしゃがんで、数を数える間に、私は全力で離れた場所に行き、商品棚の後ろや、見つかりにくい角に身を隠します。
それから息を潜めて、男の子が来ないように隠れてると、必ず知らない男の人に「どうしてそこにいるんですか?」と話しかけられます。
隠れて待っている間、近くには誰もいなかったはずです。そこで、ようやくこのショッピングモールに自分と男の子以外の人間が誰もいないことに気付きます。不思議なことに、それまでは違和感を一つも抱きません。
話しかけてくるのはいつも同じ男の人です。私が返事しようがしまいが構わず、男の人は「ずっといますよ」と続けます。「何がですか?」と聞いても、ずっとにこにこしているだけです。
隠れ鬼をやっているせいか、何となくその言葉に気味の悪さを覚えて、違うところに隠れようとします。
すると、決まってこのタイミングでピンポンパンポンと店内放送の音が鳴ります。
「酢こんぶさま、たけるくんがお待ちです。○○までお越し下さいませ」
お客様呼び出しの放送のようですが、随分とラフです。そして、呼び出されているのは私ですが、「たけるくん」という名前に覚えはありません。○○は何か言ってたことは覚えてるのですが、それが何なのかは思い出せません。
戸惑っていると、相変わらずの笑顔で男の人が言いました。
「ずっといますよ。たけるくんは、ずっといますよ。あなたと」
そこでいつも目が覚めてしまいます。
あの男の子の名前が「たけるくん」なのか、あの男の人が何者なのか。分からないことばかりですが、もうずっと、それこそ5年近くもこの夢を見ています。
隠れ鬼が始まってから、放送が入るまでの時間はどんどん短くなっている気がします。ですが、流れは隠れ鬼をする場所が違うということ以外は一切変わらず、何回も同じことの繰り返しです。
この隠れ鬼は一体何なのか。いつかは男の子に捕まってしまうのか。いつまで見るのか。それが分かる日がいつかは来るのでしょうか。
そして筆者も次第にそのような夢を見ることはなくなり、数年の月日が流れ、彼女は結婚し可愛い男の子を出産することになりました。
そして男の子が産まれて5年の月日が流れたある日、彼は突然「昔ここに来る前、ママと遊んだのが楽しかった」と言いました。
当然、彼はまだ5歳。『ここに来る前?いつの話?』と母親である彼女が聞き返すと、その男の子は言うのです。
「憶えてないの?ママと一緒によく、隠れ鬼して遊んだじゃない!大きいショッピングセンターみたいなとこで。ママいつも全然見つからないし、なかなか出て来てくれないから僕、お店の人によく放送でママのこと呼び出してもらってたんだよ」…と。
そして、彼女の産んだ男の子の名前は『たける』くんだったそうです。
酢こんぶよりボンタンアメが食べたくなりましたけど。