父が友の遺品を届けに行った時の不思議なお話
投稿者:菊の花 (1)
戦争が終わり父が友の遺品をご両親の元へ届けに行った時に起きた不思議なお話しです。
そして、心に残るお話しです。残暑の頃でしょうか、暑さが残る季節だったそうです。
友の遺品をご両親の元へ届けるように頼まれた父は、まだ行ったことのない友の住んでいた片田舎へ向かうことになりました。
汽車とバスを乗り継ぎ住所を頼りに、友の家を目指しておりました。
村の人からの聞いた同順を手掛かりにご自宅へ向かう途中で、分かれ道に差し掛かりどっちに向かえば良いのか思案していると。そこに野良着を着た男性が来たので「○○さんの家は、どっちかね」と尋ねると「右の道だと」教えてくれたそうです。
でも、その道は進めば進むほど人を拒むような獣道でした。1時間ほどで着くと聞いていたが、もう2時間近く歩いている。
やはり、あの分かれ道は左ではなかったのかと思う父でしたが、もう少し行けば開けた道にでるのではと進んで行きました。
次の瞬間、誰かが「その先を行ってはいけない!」と言う声が聞こえてきたそうです。父は、振り返っても誰もいない。少し歩みを止めて当たりを見てみると……。
その先は、崖だったそうです。それから、元の別れ道まで引き返して左側の道を歩いていくと一軒の家が見えてきたそうです。
そこで、道を尋ねるとそこが友のお家だったそうです。
そこには、年老いたお母さんが1人で息子の帰りを待っていたそうでした。
事情を話し遺品を渡すと、息子の遺品を抱きしめ父に、何度も、何度お礼を言ったそうです。
そして、今夜は泊まっていってほしい言われました。
友の話も聞きたいのだろう。それに、たどり着くまでにかなり時間もかかり真っ暗な中帰るのもと思い泊まらせてもらうことになりました。
上がらせていただき、仏壇に線香を上げさせてもらい友との話しをお母さんに話し、その夜は静かに訪れました。
真夜中過ぎに、父は物音に目が覚めて何事かと目を覚ましたそうです。
それは、亡くなった友が部屋の扉をたたく音だったそうです。
「ドン、ドン、……。開けてくれ!」父は、その声の主が友であることに気付き、怖くて布団を被って一晩中静かになるのをまっていたそうです。
朝になった頃には、父もいつの間にか眠っていたそうでした。
朝ごはんを用意してくれたお母さんが、「昨夜は、息子がご迷惑をかけてすいません」と言われたそうです。
お母さんも、息子が帰ってきたことに気が付かれいたようでした。
お母さんは、他にも道に迷って反対の道を教えられて困っていた父を助けたことを息子さんから聞いていたようです。
気の合う友だから労って欲しいとも言っていたと息子さんから聞いたそうです。その話を聞いて父は、少し涙ぐんでいたことを記憶しています。
そのお話しを聞いた時は、本当に不思議な話しってあるんだなぁと幼いわたしは、不思議に思っていました。
そのお友達と父は本当に仲が良くて良い関係を築いていたのだと不思議なお話しとお友達の大切さを教えてもらえた今も忘れる事のできないお話しです。
開けてあげればよかったのでは?
右に行けと指示した人物は、何者?