不思議な風と愛犬の想い
投稿者:Nirix (1)
私が高校2年生の時の話です。
当時、勉強に部活にと忙しい毎日を過ごしていました。そんな日々を癒してくれるのは愛犬のメイです。私が小学2年生の時にメイを迎えたので、もう11歳の老犬ですがいつも元気に遊び、表情豊かな愛犬でした。
ところがそんなメイは癌を患い日に日に元気がなくなっていき私は不安な中、高校に通学する毎日を送るようになったのです。
そうこうしているうちに、高校で毎年開催されるマラソン大会の日が今年もやって来ました。私は部活で体力を養っているとはいえ長距離走がとても苦手です。
しかしゴールした順に帰宅ができる特典付きなため同級生たちの張り切りムードですが、私のテンションはガタ落ちです。それもそのはず、去年は後ろから数えた方が早い順位でしたから。また今年も帰るのが遅くなるんだろうなと思いながらスタートを切りました。
あっという間に先頭からは引き離されてため息が出そうでしたがそれでも必死に走らないと帰れないので無我夢中で走ります。
すると突然、ブワッと背中から風が吹き付けてきたのです。そんなはずはないのに。何故ならマラソン大会のコースは鬱蒼と茂った森林の中ですが風を感じた時周りの木々は揺れていなかったからです。追い風のように背中を押す風におかしいなと思いながらも嫌な感じはしなかったので気にせず走りました。
その風のお陰なのか、あまり疲れずドンドンと前の人を追い越し、あっという間にゴールへ。去年より順位が50位も上がるという結果でした。
そういう結果でしたから私はルンルンで着替えて早々に下校しました。早く帰れた事を嬉しく感じていた私ですが家に入ると母が泣きながらメイを抱いている姿を見て愕然。辛うじて息があるメイは今まで見たことないくらい苦しそうにしていました。そんなメイですが私の姿を確認すると母の腕からすり抜けて私の膝へと腰を下ろしたのです。そしてクゥーンと鳴き静かに息を引き取りました。
その時の時間は今でも忘れられません。14時30分。
もし私がマラソン大会で去年と同じように走っていたらメイの最期に立ち会うことは出来なかったでしょう。去年、家に着いたのは15時30分過ぎてましたから。そう思うとあの時吹き続けていた追い風はもっと早くゴール出来ていればと私が後悔しないようにメイが起こした奇跡の風なのではと思わずにいられません。
いい話や…
待っててくれたんだね!