なんばんみそが来るから、裏山には行くな!
投稿者:Ba-chi (4)
「なんばんみそが来るから、裏山には行くな!」
自分が小学校の低学年の頃、よく両親からそう注意をされていました。
実をいうと、子どもの頃、自分はカブト虫やクワガタ虫が大好きで、夏休みともなると、いつも朝早く起きて、自宅の裏山へ足を運んでいたのですが、それがどんどんヒートアップし、まだ薄暗い時間から裏山をさまようになりました。
近所に住んでいたお兄さんたちの中にも、カブト虫が大好きな人がいて、「朝早く行った方が、カブト虫がたくさんいる!」といっていたのを聞いて、真に受けてしまったのです。
いまになって思うと、まだ暗い時間から子どもひとりでは危険だと、両親が思ったのでしょう。
裏山には、なんばんみそという正体不明のおばあさんがいて、子どもたちのことを狙っている。
だから朝早く裏山へは行くな、というのが両親のロジックでした。
「うん、わかった」といいながら、だけど、どうしてもカブト虫やクワガタ虫をたくさん捕まえに行きたかった自分は、結局、親の目を盗んでコソコソと裏山へ通い続けました。
そんなある日のこと、変な胸騒ぎがして、誰かにつけられている‥‥と感じた自分は、なんともおぞましい光景を目にしてしまいました。
裏山の一郭に湧き水が出ているスポットがあったのですが、そこに魚の食い散らかされたような光景が広がっていたのです。
生臭いにおいがして、なぜかどういうわけか下駄の足跡がたくさんありました。
あっ、これはなんばんみその仕業だと直感した自分は、それ以来、まだ暗いうちから裏山へ行くことをやめました。
なんばんみそが棲むという、あの裏山。
もう見る影もなく、いまはニュータウンの一部になってしまいましたが、自分の中では、いまだになんばんみそと呼ばれる老女が息づいているように思われてなりません。
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