消えた男の子

これは私が小学校高学年くらいの頃の話です。
いつも私は、学校から帰ったあと近所の友達と一緒に遊んでいました。団地が多い地域で、私も友達も団地住まいだったため団地の中の公園や、敷地内の駐車場で遊ぶのが団地の子供たちの中の日常でした。

そんなある日、いつものように友達と遊んでいると三輪車に3～4歳くらいの男の子から、「ねえねえ、一緒にあそぼ」と声をかけられました。
周りにお母さんらしき人もいないし、他にお友達もいません。団地といえど人通りは少なく、該当も少ない地域なので1人にしておくと危ないかもしれない。そう思って私たちはその子と一緒に遊ぶことにしました。
「お母さんは？」と聞くと「‪まだ帰ってこないの」と言います。今思えばこんな小さい子供を外に放ったらかしにしてどこかに行くか？という話なのですが、小学校高学年の私たちにはそこまで考えが及びませんでした。
私たちは三輪車を押してあげたりボールの投げあいっこをしたりして、その男の子とたくさん遊びました。

そして夕方の17時を回りました。季節は秋だったので、もうそろそろ暗くなってくる頃です。私たちも門限が近くなってきたので、そろそろ帰るねと伝えると、男の子は「やだ！まだ遊ぶ！」とごね始めます。
困った私たちは、男の子に「私たちほんとにもう帰らないといけないの。お母さんはもう帰ってくる？」と聞きました。
すると男の子は、「うん、わかった。楽しかった、ありがとうね。」と素直に聞き入れてくれました。
団地の前まで男の子を送って、バイバイね。と手を振り私たちは踵を返して歩きだしました。
ですが数十メートルほど歩き、ちゃんとお家入ったかな？と振り返るとどこにも男の子はいませんでした。
友達とびっくりして男の子の家の前まで戻り、近くを探し回りましたがどこにもいません。あんなに小さな男の子がこんなにすぐどこかに消えるはずはないのに。

両親や団地の人もその男の子に心当たりはないそうです。その日から男の子には会うこともありませんでした。あの子は一体なんだったのでしょう……。