顔を覗き込むカオナシのような何か

中学の３年間暮らしていたアパートには不思議な現象がたくさんありました。
玄関を入って右手がトイレお風呂洗面台。入って右手が台所、そのまま右に進んで私たちの部屋がありました。
１本の柱を中心に、台所と私たちの部屋とあと2つの計4つの空間がある間取りでした。ぐるぐると回ろうと思えば回れる間取りです。

夜になると玄関から人が入るような音がしてそのまま台所をぎしぎしと足音を立てながら私たちの部屋を覗いている何かを感じます。私たちは「またか」と思うのでそこまで怖くはありませんでした。なぜなら、私たちの部屋には入れないからです。不思議です。

そしてそれは、昼夜を問わずやってくるようになりました。熱が出て、一人で休んでいると、玄関が開いて閉まる音がしました。人が入ってくるにしては短い音です。よくあることなので驚きませんでしたが、今回は部屋にはいる音がしました。
「叔母が来たんだ」と思い「おばさん？」と声を出そうとすると声が出ませんでした。

嫌な予感がしました。寝ているここはいつもの部屋とは違う、別の部屋。案の定、足音は私のところまで来て、寝ている私の周りを不自然にぐるぐると回るのがわかりました。枕元で止まりました。気持ちが悪いけど、目を開けてみると、体は真っ黒で顔だけがカオナシのような様子の何かが気持ちの悪い様子で顔を覗き込んでいました。不気味に手を握ってきます。

母はよく霊を見る体質でこういうことがあったら唱えなさいと言われていたことがありました。
「私は何もしてあげられない。あっちに行って。」そして、金縛りを解くように力一杯手を握る。その時手を握られていたので、爪を立ててぎゅーーとにぎりました。
すると、金縛りは解けましたが、しばらくは目を開けるのが怖くてお布団に潜っていました。いつの間にか寝ていて、気づいたら母が帰ってきていました。

手を見ると爪の間に皮膚のようなものが詰まっていました。