白い手を見る少女の「怖い話」
投稿者:アルフォート (4)
これは私が高校一年生だった頃の話です。
その日は文化祭の準備の追い込みで、夕暮れ時にも関わらず教室内に何人ものクラスメイトがそれぞれの担当の仕事をこなしていました。
男女問わずとりとめのない話をしながら作業を進めていたのですが、やがて誰からか順番に怖い話をする事になり、女の子達がキャーキャー言いながらそれなりに盛り上がっていました。
そんな中、一人の女の子が「私、幽霊の手が見えるんだよね」と言い出しました。
それまではどこかで聞いたような話ばかりだったので現実離れした話だとみんな面白半分で聞いていたのに、突然実体験の話が来たため、教室内に緊張感が走ります。
「私、小さい頃お兄ちゃんが持っていた本で『霊を見る方法』という本を読んだことがあるの。色々な霊の見方が書かれている本だったんだけど、その本を見て以来…人の背後に白い手が見える事があるの。」
教室内にいたクラスメイトは全員作業の手が止まり、その女の子の話を真剣に聞いていました。
「それで、その白い手が見えた人なんだけど、その後必ずすぐに不幸が訪れるのよね…」
女の子の中からヒッと小さな悲鳴が聞こえたりしてきたが、誰もが続きが気になり口を開こうとしません。
「その不幸って言うのは石につまづいて転ぶ程度の小さなものから、大けがをする大きなものまで様々で、起こってしまうまでは私もどんな事が起きるのかわからないのだけど、多分その白い手はその人の守護霊で危険が迫っているのを知らせてるんじゃないかと思う。その人に手が見えていることを教えたとしても、いつ訪れるのかわからないし不幸は覆せないみたいだし。だからホントはここで言うつもりもなかったんだ…」
女の子の話が終わったところで誰かがその女の子に質問を投げかけます。
「え、それじゃあ今も見えてたりするの?」
すると女の子はしばらく黙ったままだったのですが、意を決したように話し出しました。
「うん、実は今も一人、見えてるんだよね…」
その瞬間、クラスメイトたちは悲鳴を上げ、パニック状態になりました。
「誰、誰なの?」
「私、私じゃないよね?」
「俺?俺死ぬの?やだよ!」
教室内はパニック状態で収集つなかい様な状態でしたが、幸か不幸か私達の教室は最上階の最奥にあり、文化祭の準備中という事もあり、異変には誰も気付きませんでした。
どれほど時間が過ぎたのか覚えていませんが、皆騒ぎ疲れたのか落ち着きを取り戻した頃、女の子が再び口を開いて言いました。
「嘘だよ。見えるわけないじゃん!」
一同は安堵の表情を浮かべ、涙を浮かべていた女の子達にも笑みが戻りました。
「もーすっかり騙されたよ!」
「その怖い話すごい持ちネタじゃん!」
「怖かった~超怖かった~!」
それぞれ落ち着きを取り戻した頃には外はすっかり暗くなり、その日はこれで帰る事となり、皆帰り支度を始める。帰り際、話をした女の子に「あの怖い話って本当に嘘なの?」と聞く子が何人もいましたが女の子は笑って「嘘だよ」と答えていました。
その後何年も経ち、女の子を真似て酒の席などでウケ狙いにこの話をしてみたこともありましたが、私はこの話が本当にネタなのかどうか、気になって調べてみたのです。
白い手が見えるという話はネット上にも怖い話系の本にもヒットせず(霊の手系の話はいくつもあり白い手でヒットはするのですが似た様な話は無い)。霊の見方的な本はいくつかヒットした事もありましたが、白い手が何か元ネタのある話だという事は残念ながら自分の力で突き止めることは出来ませんでした。
私たちは普段から大なり小なり何かしら不幸な目には遭っていますし、本当に見えていたとしても、不幸から逃れられないのなら知らない方が良いのかもしれません。あのクラスメイトの女の子の怖い話は、本当に作り話だったのでしょうか。
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