その時、中から
「上がっていきなー」
と声が聞こえました。
「でも友達持たせてるし」
「いいから入っておいでーお菓子もあるよー」
昔の田舎ですから、近所のおばさんがお菓子をくれるなんて珍しいことではありません。
お菓子もらって帰ろう。それぐらいのつもりで磨りガラスの引き戸を開けました。
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃーい」
迎え出てくれたのは、自分の親より少し歳下くらいの品のありそうな黒髪の女性でした。
割烹着を着て、髪は綺麗に後ろに束ねていました。
外観からは想像できないくらい玄関は綺麗に片付けられていました。
「ボール遊びしてたの?」
「うん、蹴ったら入っちゃった」
「そうなの。怪我しないで良かったね」
女性はニコニコしながら頭を撫でてくれました。
「今お菓子持ってくるから居間で待っててね」
通されたのは、綺麗に整頓された居間でした。
どこか甘い匂いがして、花瓶にはラベンダーの花が生けられていました。
「お待たせ」
女性が持ってきてくれたのはクッキーとジュースでした。
「わあ、クッキーだ!」
思わず声が出ました。
女性は嬉しそうに笑いながら、私の前にお皿を置きました。
「たくさん食べていいからね」
「ありがとう!」
私は遠慮なくクッキーを一枚つまみました。
サクッとした食感で、バターの甘い香りが口いっぱいに広がりました。
「おいしい!」
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