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特別投稿

礎吽亭雁鵜さんによる特別投稿にまつわる怖い話の投稿です

今日読む予定のSF小説
長編 2026/10/25 23:37 76view

しかしその夢を見た日から俺は変わった。
なんてことはなく今まで通り仕事では冴えないし、家庭ではあまり居場所がない。
もっといろんなことを一生懸命がむしゃらにやれば・・・とも思うが、体も心も動いてはくれない。
毎日をなんとなく消化するように生き続けた。

そして、来年には定年を迎えやっとゆっくり過ごせる日が来るぞと思った頃、肺に癌が見つかった。
ステージ4とのことで、転移もしているようで今の医療技術では手の施しようがないとのことだった。

会社には体調のことを伝え、少し早い引退をすることにした。
年下の上司はなんだかほっとしたような顔をしたような気がしたが、気にしないようにした。

最終出社日、花束や送別会など期待していたが、特に誰も準備はしていないようで、定時を少し過ぎてソワソワしていたが、1人また1人と帰って行った。

とうとう私と年下の上司のみがオフィスに残ってしまった。
上司はややため息混じりに、どこか軽く行きますか?と誘ってくれたが、もはやそんな気持ちはすっかり萎えてしまい、固辞してしまった。
どうして人の好意を素直に受け取れないのだと自分が嫌になる。
妻には送別会があるからと伝えてしまっていたので、1人安居酒屋で2時間ほど過ごして帰った。

会社を辞めて気が抜けたのか一気に体調が悪くなった。
医者からは遠回りに身辺整理することを勧められた。
家に帰り、今まで寄り添ってくれた妻や子供達に何か手紙でも書こうと思ったが、何を書けばいいかまったくわからない。
病院の帰りに買った便箋の前で何を書くべきか考えていたはずが、気づくと週刊誌のゴシップ記事を読んでいた。
もういいやと思い便箋を机の奥にしまう。

よく余命わずかになれば誰でも毎日を大事にするようになると聞くが、どうやら生来の怠け者は例外であるようだ。
むしろ体の痛みが強まっているので何もかもが億劫なのだ。
リビングのソファに横になっていると、病人であるはずなのに妻からは白い目で見られる。
これなら入院してしまった方がいくらかましなようだが、病院としてはまだそういう時期ではないそうだ。

その後も、どうせその内死ぬのだと思い、何も有意義なこともできないまま、無為な日々を過ごしてしまった。
また幸か不幸か医者の見立てよりも長く生きられたためかえって家族には迷惑だったかもしれない。
しかしそんな日々ももう終わりだと病院のベッドの上で安らかに感じられた。
ベッド脇には妻と子供が待機してくれているが、呼び出されてから2時間ほど経って暇になったのだろう、娘はスマホを弄っている。
最期だし何か家族に声をかけようとするが声が出ない。それにだんだんと眠いような感覚に引っ張られて意識も遠くなってきた。
なんか思うままにならない人生だったなと目を閉じた。

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