奇々怪々 お知らせ

特別投稿

礎吽亭雁鵜さんによる特別投稿にまつわる怖い話の投稿です

今日読む予定のSF小説
長編 2026/10/25 23:37 84view

「はい、お疲れ様でした」
私は目を開いて頭部に取り付けたヘルメットのようなデバイスを外しカプセル形状のベッドから降りて脱いでいたヒールを履く。
「どうでしたか?冴えない昭和のサラリーマンコースは?」
「ええ、無能な中年の悲哀を十分に感じられたわ。怠惰で無気力に生きてる人って理解できなかったんだけど、彼らなりに頑張らない、頑張れない理屈があったのね。今後のマネジメントに活かせる体験だったわ」
「ああ、そういう意図でこのコースを選ばれていたのですね。多くの方は大金持ちとか美男美女みたいな華々しい人生の擬似体験を選ばれるんですが、いやはや目の付け所が違いますね」
「お世辞を言っても何も出ないわよ。
そういえば途中で妙な夢を見たんだけど。なんか自分が神だったみたいな?
そもそも今まで夢なんて見てない気がするんだけどなんかそういう設定にしてくれたの?」

「いえ、そのような特殊なオプションはセッティングしておりません。それに夢については体験時間の圧縮のために基本的には見ないようになっているはずです。機械の不具合かもしれませんので確認するようにいたします。失礼いたしました」
「いえ、別にいいのよ。それじゃあまたお願いね」
「ご利用ありがとうございました。またお越しください」

ざっと60年分の体験のはずだけど、あの夢がとても印象深いわね。
もしかしたら何をやっても上手くいかない人ってのは、神様からそうなるように運命付けられているのかしら。
ふふ、なんてね。

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「っていうSF小説を昨日読んでさー」

「へー、マサくんってそういうの読むんだね、知らなかったよ」
「普段全然読まないけど、なんか急に読みたくなってね」
「あ、そうなんだ。図書館とかで借りたの?」
「いや、ネットで探して見つけたんだよ」
「なんか面白そうだから僕もちゃんと読んでみたいな。タイトルはなんていうの?」
「えー、ちょっと待って、履歴見るから、あ、これだ」
マサくんはスマホの画面を見せてくれた。
タイトルは「今日読む予定のSF小説」だった。

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