奇々怪々 お知らせ

不思議体験

幕の内ザバスザマスさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ほんとじゃない期間
短編 2026/08/03 17:16 157view

ただ、妹に冷たく拒絶されて、自分の名前が――私という個人の輪郭が、スッポリと消えていることに初めて気づくのだ。

ふと、思う。あの日、「ほんとじゃない」期間が終わったあと。
それまでとはうってかわってピタリと甘えながら、妹が言ったこと。

「大丈夫。名前がわかんない限り、何もできないから。」

ぽつりと、
「だからまだ平気」

私の足を枕がわりにけらけら答える妹の目は、笑っていなかった。

今日も、家に帰って母はおらず、リビングのソファで妹と二人きりになった。

あの子は私に一瞥もくれず、テレビの音だけが響く部屋で、静かに言った。

「お姉ちゃん、ほんとじゃない」

そう言われて、反射的に自分の名前を思い出そうとした。が、思い出せない。昨日までは覚えていたのに。確かに分かっていたのに。

妹の目が、私をとらえている。
私は何も言い返せないまま、黙ってマグカップを見つめた。

責めるような視線を、なんだか当然だと思った。

 

はて。

今日の私は、いつから名前を知らなかったんだっけ。

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