ただ、妹に冷たく拒絶されて、自分の名前が――私という個人の輪郭が、スッポリと消えていることに初めて気づくのだ。
ふと、思う。あの日、「ほんとじゃない」期間が終わったあと。
それまでとはうってかわってピタリと甘えながら、妹が言ったこと。
「大丈夫。名前がわかんない限り、何もできないから。」
ぽつりと、
「だからまだ平気」
私の足を枕がわりにけらけら答える妹の目は、笑っていなかった。
今日も、家に帰って母はおらず、リビングのソファで妹と二人きりになった。
あの子は私に一瞥もくれず、テレビの音だけが響く部屋で、静かに言った。
「お姉ちゃん、ほんとじゃない」
そう言われて、反射的に自分の名前を思い出そうとした。が、思い出せない。昨日までは覚えていたのに。確かに分かっていたのに。
妹の目が、私をとらえている。
私は何も言い返せないまま、黙ってマグカップを見つめた。
責めるような視線を、なんだか当然だと思った。
はて。
今日の私は、いつから名前を知らなかったんだっけ。
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