一人暮らしを始めてから、スマホの「スマートホームアプリ」を導入した。
玄関の鍵をスマートロックにして、スマホが鍵の代わりになるやつだ。
これが本当に便利で、ドアの開け閉めがスマホでできるだけでなく、防犯用に「ドアが開閉された時間」がすべてスマホに通知され、履歴として残るようになっている。
ある金曜日、僕は大学のサークルの飲み会に参加していた。居酒屋で盛り上がっている最中、ポケットのスマホがブルッと震えた。画面を見ると、スマートホームアプリからの通知だった。
『21:15 玄関の鍵が解錠されました』
『21:15 玄関のドアが開きました』
『21:16 玄関のドアが閉まりました』
一瞬、心臓が冷たくなった。僕は今、居酒屋にいる。
実家の両親や友達に合鍵は渡していない。泥棒か?パニックになりかけたが、ハッとした。
このアプリは時々サーバーの調子が悪くて、通知が数時間遅れて届くバグがあるのだ。
「あ、なんだ。僕が夕方、飲み会に行くために家を出た時の通知が、今ごろ遅れて届いたんだな」
そう納得すると、急にバカバカしくなった。僕はスマホをポケットにしまい、何事もなかったかのように生ビールのグラスを干した。
結局、飲み会は深夜まで続き、僕が自分のアパートの最寄り駅に着いたのは午前2時過ぎだった。
夜道を歩きながら、念のためにアプリの履歴をもう一度確認してみることにした。
バグとはいえ、何時に開いたことになっているのか気になったからだ。
画面を開き、さっきの通知の履歴をスクロールする。
『18:30 玄関の鍵が解錠されました』
『18:30 玄関のドアが開きました』
『18:31 玄関のドアが閉まりました』
『18:31 玄関の鍵が施錠されました』
「……え?」
血の気が引いた。僕が夕方に出発した時の履歴は、18時30分としてすでに完璧に記録されていた。
じゃあ、さっきの21時15分の通知は、遅延バグなんかじゃない。
本当に、そのリアルタイムの時間に、誰かが僕の部屋の鍵を開けて中に入ったんだ。
動悸が激しくなる。でも、どうやって? 鍵は僕しか持っていないはずなのに。
怖くなった僕は、アパートの直前で足を止め、スマホの画面を凝視した。
次の瞬間、画面に新しい通知が来た。
『02:15 玄関のドアが開きました』
『02:15 玄関のドアが閉まりました』
『02:15 玄関の鍵が施錠されました』
時間は、今ちょうど午前2時15分。アパートはもう、目の前にある。
暗い建物の二階、僕の部屋の窓は真っ暗なままだ。






















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