「なーんてな。驚いたか。」などという言葉は、Aの口からは発せられることはなかった。
「この話するのは、お前で4人目なんだよ、いろんな奴に借金してるからさ、
でも、2人目が終わった後に、これさ。」
競艇の当選金の画面のスマホを揺らす。
「お前、借金返してほしかったよな。で、受け取ったよな。
利子はちょっとしたお礼みたいなもんさ。
ま、信じるか信じないかは、お前に任せるよ。」
そういって、Aは喫茶店の伝票をもって立ち上がった。
「でも、もう十分に、伝わっただろ。」
そうして颯爽と去っていった。
彼の去り際に、あの言葉が、僕の脳内に響いた気がした。
雨が、降りだしそうになっている。
彼が最後まで口を付けなかったお冷に、
人ならざる者の瞳がこちらをじっと見つめているような気がした。
僕は家に帰り、傘を傘立てに投げ、濡れた上着を脱ぎ捨て、
自分の部屋に入り、鍵をかけた。
僕は、PCを立ち上げ、この小説を書き始めた。
熱っぽい、のどが痛い、雨に濡れて風邪をひいたとしても、
数時間でここまで悪化するだろうか?
のどの痛みが酷くなる。部屋にあったエナジーゼリーを蓋を歯で挟んで固定し、袋を回して、
口の中で開いてゆっくりと飲み干す。
中身が見えない容器で密封されたものだけが、今、僕が口に入れることができる液体だ。
例え未開封でもペットボトルのように中身が見えるものはダメだ。
誰に教えられたことでもない。だが確信に近い直感。伝わるのだ。
無論、飲んでいる最中に口を開けるなどもってのほか。
一度に中身を飲み切って素早く飲み口から口を離す。
部屋の中にいる。見えないが、いる。
そいつは液体を伝って僕の中に入ってこようとしている。
そうなれば、終わる。























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