僕の妻は、相手の健康を願うタイプのプレゼントを自分では絶対に選ばない。
例えば、敬老の日の「いつまも元気でいてね」や入院した友人への「早く退院してね」の気持ちを込めた贈り物だ。
理由を聞くと妻は
「私が選ぶと絶対によくないことがおきるから」
と答えた。
オカルトやジンクスを信じない僕は、腑に落ちなかった。
「面倒なら素直に言ってくれればいいのに」と伝えたら、妻は否定し、少し言い合いになってしまった。
ムキになった僕は、必要になるたびに妻にプレゼントを選ぶように指示した。
そのたびに妻は拒否し、言い合いが発生する。
ある日、上司が交通事故で怪我をして入院した。
急ぎでお見舞いに行く必要があったため、妻に見舞いの品を用意するように頼んだ。
しかし、やはり妻は「私が選ぶとよくないことがおきる」という理由で拒否した。
私にも都合があったため、「くだらないことを言っていないで用意しろ!」と強い口調で言ってしまった。
帰宅すると見舞いの品が準備されていた。
やればできるじゃないか、と妻を許し、翌日に上司のお見舞いに行った。
それから1ヶ月ほどして上司は無事に退院した。
妻にそのことを伝え「もう馬鹿なことをいうな」と念を押しておいた。
妻は「何事もないといいけど」と心配そうな顔をして言い、僕をイラつかせた。
そんなやり取りがあってから2ヶ月くらい後、その上司が再び入院した。
今度は怪我ではなく、胃ガンだった。
健康診断で発覚し、そのまま入院となってしまった。
妻にそのことを伝えると「だから言ったでしょ」と言った。
その態度があまりにも失礼だったため、僕は用意されていた夕食をテーブルから落としてやった。
プレゼントをしてから2ヶ月も経っているのに、こじつけが過ぎるだろう。
母に妻の様子を相談してみたら、やはり妻がおかしいと言っていた。
そんな出来事を忘れた頃、妻が珍しく「お義母さんのプレゼントを選んでみた」と母の日のプレゼントを見せてきた。
県外の神社まで出向き、病気平癒や身体健康のご利益がある神社でお守りを買ってきてくれたようだ。
それと母が好きなメーカーの菓子セットという組み合わせは、なかなかのセンスだ。
母と妻の関係が少しギクシャクしているようにも見えたため、妻なりの気遣いだったのだろう。
そのプレゼントを受け取ってから2週間後、母が死んだ。
婦人会で登山に行き、簡単なコースのはずなのに急に姿を消し、翌日に遺体で発見された。
滑落死ということだった。
























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