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呪い・祟り

志那羽岩子さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

よく回る
短編 2026/02/18 21:03 103view

熱い。

だが、皮膚の下で脈打つものが、鼓動なのか振動なのか分からない。

赤子はリュウの小指を掴んだ。

細い指だった。

だが離れない。

万力のような力でもない。ただ、指と指の境界が曖昧になっていく。皮膚の感覚が、工具を握るときと同じになる。

喉から声が出ない。

視界の端で、当主が静かに頷いている。

「よく回る」

何が、とは言わなかった。

それから間もなく、リュウの指は動かなくなった。硬直したのではない。動く必要がなくなっただけだ。工具を握れば、火花は正確に散る。握らなければ、ただ静かに冷えている。

町の者は言う。あのガレージは再興した、と。後継ぎは優秀で、若い整備士も育っている、と。

ただ、そこに雇われた者たちは皆、ある日を境に表情を失う。指は滑らかに動くのに、目だけが遠くを見ている。

工場の奥のピットでは、今夜も音がする。

キィィ、キィィ。

それは配線の擦れる音かもしれない。潮が引く音かもしれない。

入り口に立つと、焼けた油の匂いが肺の奥に沈む。初めて嗅ぐはずなのに、どこか懐かしい。

潮が満ちる刻限。

ガレージの扉が、わずかに開く。

中では誰かが待っている。

部品が足りないのか、それとも、もう足りているのかは分からない。

ただ、指先だけが、わずかに熱を帯びる。

――その感覚に、覚えがあるなら、もう遅い。

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