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意味怖(意味がわかると怖い話)

志那羽岩子さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

もう、いる
短編 2026/02/16 16:23 167view

「まだ人、いる?」

電話口で。

「今、家にいる?」

そのたびに、胸の奥がわずかに沈む。自分の内側に、もう一つの位置が増えていく。

先日、コンビニで店員に聞かれた。

「袋、いりますか?」

私は首を振った。声は出さなかった。だが心の中では、はっきりと音が鳴った。

いる。

帰宅して部屋に入ったとき、違和感に気づいた。家具の配置は変わっていない。窓も閉まっている。だが空間が少しだけ狭い。自分の立っている場所が、以前より窮屈だ。

まるで、誰かがもう一人分、ここに“いる”みたいに。

鏡を見る。映っているのは私だけだ。だが焦点が合わない。ほんのわずかに、重なっている。輪郭が二重に揺れる。

居るのは、私か。

入ったのは、何かか。

要られているのは、どちらだ。

思い出す。教授の板書。

「もう、いる」

あれは確認ではなかった。宣言でもなかった。

報告だったのかもしれない。

今、この文章を読んでいるあなたも、きっと一度はその音を内側で鳴らしたはずだ。否定しようとしても、語を認識した瞬間に。

いる。

それを口に出さなくても、意味を選ばなくても、音は立ち上がる。重なったまま、消えない。

あなたのいる場所は、少しだけ狭くなっていないだろうか。

もし、ふとした拍子に自分の輪郭が曖昧に感じられたら、それは何かが入ったからではない。

あなたが、要られたのだ。

そしてそれは、もう――いる。

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