私は悪くない。私は、やっていない
妻は…妻は階段から足を滑らせて落ちてしまったのだ
私は何も知らない
その後、病院で妻の死亡が確認され、
同時に――私の【認知症】が診断された。
何も分からない老人。風呂にも入れない。糞尿で下着を汚す
認知症は私にとって都合がよかった。
一通りの手続きが終わり、家に戻ったその日。
寝室に入るとあの日本人形が、棚にあった。
買った覚えも、もらった覚えもない
だが、あれは……私の周りに、ずっとついて回る」
私はあまりの話に頭の整理が追いつかずにいた。
「今日は失礼します。」
そう吉川さんに告げ足早に帰路へとついた。
翌日 火曜日の朝、昨日の話があるため憂鬱な気分になりながらも9時頃吉川さん宅へ到着した。
玄関から入り居間へと足を進める。
「吉川さんおはようございます!」吉川さんを探しながら居間に置いてあるコタツに目がいく。
かよこさんが倒れる姿があるはずの記憶のように脳裏に浮かぶ。
家からは物音ひとつしない。
吉川さんは珍しくまだ起きていないようだ。
寝室の襖をゆっくり開けると目に飛び込んできたのは仰向けで寝転び、目と口を限界まで開け苦悶の表情で息絶えている吉川さんの姿だった。
「は!?え?吉川さん!?」
慌てて駆け寄り脈を図るも吉川さんは既に息を引き取っていた。
司法解剖の結果「窒息死」だった。
担当した解剖医の話では信じられないが吉川さんの喉の奥から【髪の毛のようなもの】が見つかったらしい。
【髪の毛のようなもの】と書いたのは医師が言うには人間の髪の毛とは少し違う
例えるなら人間の髪のように作った【人形】の髪、だそうだ。























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