以前、山の中で奇妙な生き物を見たことがある。
ミミズのような筒状の生き物で、30センチほどはあっただろうか。色はオレンジとネイビーのツートンカラーだった。よく見ると輪のような溝がびっしり連なり、体表は粘液でぬめぬめと光っている。
その生き物は鎌首をもたげ、何かを探すように口であろう先端をビッタンビッタンと地面に打ちつけていた。とても気持ち悪かったのだが、私はなぜかその生き物から目が離せなかった。
そしてエサなのだろう、ミミズを見つけるとものすごい勢いで絡みつき、蕎麦でも啜るようにちゅるんと吸い上げてしまった。ミミズの膨らみが生き物を押し上げ、どんどん臓腑へ飲み込まれていくさまを、私はつい言葉も忘れて見ていた。
満足したのか、その生き物はくんくんと地面を嗅ぐようにして茂みに消えた。
その日私は高熱を出し、悪夢を見た。
あの生き物と似たような、しかし私よりずっと大きなそれが、私を足の方から飲み込んでいくのだ。じわりじわりと溶解液に溶かされながら、粘液にまみれながら、引きずり込まれていく。強い吸引力に、もがいてももがいても逃れられない。
ぶちゅるぶちゅると肉が分解される音がする。頭の先まで生温かい粘膜に包まれ、伸ばした指の先まで啜りつくされた。私もあのミミズのようにこの生き物の糧となるのだ。そう思ったとき、目が覚めた。本当に気持ち悪い夢だった。
後日調べたところ、その生き物は「ヤツワクガビル」という名前らしい。
興味があれば調べることをおすすめする。

























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