指の症状がひどくなって、黒ずみが手の甲まで侵食した3ヶ月前、
俺は外に出られなくなっていた。だんだん日光が嫌になってきて、あっという間に昼夜逆転した。
学校にもいかなくなって、部屋からも出られない。
俺はベッドの下の隙間でうずくまっているだけだった。
引きこもってからは家族からもどこか疎遠に扱われていて、健康とは真逆な、退廃的な生活だった。
その頃くらいだろうか、背中と脇腹、額に謎の突起ができたのは。
腕まで黒くなって、突起が大きくなってきた2ヶ月前、
髪の毛はかなり抜け落ちて、かきむしられた皮膚からはうっすらと血が滲んで、爪はボロボロになって、俺は最早人間の生活を送っていなかった。
明るい場所に出られず、部屋は常にカーテンを締め切った状態。窓を開けるなんて以ての外だ。
体も心もこんなにズタズタなのに、未だに俺は死んでいない。
誰も俺を助けてくれない。
もう何も考えられない1ヶ月前、
頭では分かっていても体が動かない。
このまま死んでしまうのかも、なんて思い出すと止まらない。
額の突起は細長く伸びていた。脇腹の突起は宛ら第二の腕のような造形をしている。
まるで、俺自身の体が作り変わって、人外になっていくような。
そしてついさっき、こんな腕はもういらないと思ってトンカチでグチャグチャに叩いた。
甲殻のように硬くなった真っ黒な皮膚を砕いて、中身に触れた。
俺の肉と血は白っぽく変色していた。
それで今に至る。
思い出したんだよ。
ゴキブリの血肉は白かったって。
俺、きっとゴキブリになっちゃったんだ。
まるでグレゴール・ザムザみたいだ。























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