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心霊

葉月さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

音の棲む部屋
短編 2025/11/01 17:17 828view

これは、昔わたしが通ってたピアノ教室で、友達から聞いた話。
その教室に「あやの」って子がいたんだけど――これは、その子の身に起こった出来事なんだって。

彼女はピアノ教室に通っていた。
習いはじめて三年目になるけれど、ちっとも上手にならない。

家でも練習してる。指の形も注意してる。
なのに発表会のたび、他の子と比べて自分の演奏がガタガタでうまく弾けない。

「なんで……どうして上手に弾けないの……」

ある日の放課後、彼女はひとりで校舎の廊下を歩いていた。

そのとき、音楽室の前を通ったら、ドアの鍵がカチャリと半端にかかっているのに気づいた。そっと押してみると、開いた。

(あれ……カギ、壊れてる?)

誰もいない音楽室。夕方の光が窓から差し込んで、ピアノだけが静かにそこにあった。

ふらふらと引き寄せられるようにして、ピアノの前に座った。

試しに弾いてみた。

 ――ぽろん。

その音は、家のピアノよりもずっと深くて、あたたかくて、そして美しかった。

気がつけば、指がスラスラと鍵盤の上をすべっていた。失敗もなく、音もきれいに響いている。

(どうして……?)

でも、嬉しくて、彼女はその日から、誰にも言わずに毎日音楽室に通うようになった。

毎日、放課後になると音楽室へ向かう。カギが壊れているのを誰かが気づかないことを祈りながら。

そして今日もまた、放課後の音楽室でピアノを弾く。

その日は、いつにも増して指が軽かった。楽譜も見ずに、曲がスラスラ出てくる。自分が弾いてる気がしない。

気づくと両手が勝手に動いている。

止めようとしても止まらない。鍵盤の上を、誰かの意思で指が走っていくような感覚。

「やめて……」

指は止まらない。

「もう、やだ……!」

涙がこぼれたその瞬間。

バン!! と音を立てて、鍵盤蓋が勢いよく閉まった。

「あっ――!!」

彼女の指は、そのまま挟まれた。

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