奇々怪々 お知らせ

心霊

どこかで見た話さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

魂のいく場
短編 2025/10/14 20:58 1,268view

「……けて」

音にはならない。唇だけが動く。
目も鼻も、もう形がない。肌はまるで、すりガラスのようにぼやけていた。

声をかけようとすると、背中から誰かが囁く。
「聞くな」
「戻れ」

誰の声か、わからない。ただ冷たい息だけが、耳にまとわりつく。

目が覚めるたびに、胸の奥に何かがへばりついたような気持ちが残る。
どんどん、現実の境目が曖昧になっていく。
夢なのか、思い出なのか、それすら曖昧なまま――

ある晩、俺はとうとう気づいた。

夢で見ているあの白い道。あれは、うちの裏山の奥にある獣道だ。
子供の頃、柵が立てられていて、「あっちは行くな」って言われてた場所。

地図を片手に、俺はそこへ向かうことにした。
行って確かめる。あの夢がただの幻なのか、それとも――

今、山の入り口に立ってる。
道は、確かに夢と同じだ。霧がゆっくりと地面を這っている。
俺はこれから進む。

もしこの記録が途中で途切れたら、
もし俺の姿が消えたら、

もしこの話を誰かがどこかで読んでるなら――

そのときは、おまえが来てくれ。

このノートを持って。
地図の道を辿って。
そして、絶対に忘れるな。

《声ガシテモ 耳ヲ貸スナ》
《眼ヲ逸ラスナ》

魂のいく場所は、
“見つけてしまった人間”が、
“聞いてしまった人間”が、
行く場所なんだ。

2/3
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。