奇々怪々 お知らせ

呪い・祟り

ふらんさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

闇の中の声
短編 2025/09/18 11:26 872view

数年前、私はとある地方の小さな町で暮らしていた。町には古い言い伝えや噂がたくさんあったが、「闇の中の声」と呼ばれる伝説だけは、誰も本気で信じていなかった。

その伝説はこうだ——

「夜な夜な、誰もいないはずの場所から誰かの叫び声が聞こえてきて、その声に誘われていくと、二度と帰ってこられない。」

誰もが冗談だと思っていたが、私の身に起きたことは、その冗談を超えた恐怖だった。

ある寒い冬の夜、私は一人で古い森の中にある廃墟に向かった。目的は、噂の声の正体を確かめることだった。
森を抜けると、薄く雪に覆われた廃屋にたどり着いた。中に入ると、冷たい空気と、何か得体の知れない気配が漂っていた。
突然、遠くから人の叫び声が聞こえた。最初は風の音かと思ったが、次第にその声は次第に大きく、はっきりと「誰かいるか?」と叫んでいるように聞こえた。
私は恐る恐る声のした方向へ進むと、古びた壁に血のようなシミがついているのを見つけた。むらさきがかった血の跡が、まるで誰かが這いつくばって這いずり回ったかのように続いていた。

次の日、私はその夜の出来事を誰にも話さなかった。だが、その夜以降、奇妙な夢に悩まされ続けた。

夢の中で、私は暗い部屋に立っている。誰かが私の背後でささやいている。「助けて…」と。その声は次第に増して、「誰かいるか?」と叫び声へと変わっていく。
夢から覚めたとき、耳の奥にその叫び声が、まるで自分の中に残っているかのように響いていた。

日々が過ぎ、私は精神的に追いつめられていった。夜になると、屋外から何かが私を見ているような視線を感じる。
ある晩、私は部屋の窓に映る自分の影に気づいた。だが、その影は私の動きに合わせて微動だにしない。
しかし、ふと気づくと、部屋の隅に小さな足跡がついていた。誰かが入った形跡だ。

その足跡は夜ごとに増え、いつしか私の部屋の隅に、毎晩誰かが立っているような気配が漂うようになった。
ある夜、私は決心して、足跡の先にあった古い扉を開けた。そこには、小さな部屋があり、壁には無数の落書きと、何かを書き殴った紙切れが散らばっていた。

その紙には、「声を聞いてはいけない」とだけ書かれていた。

その時、私は突如、背後に誰かがいる気配を感じた。振り返ると、そこには白くてぼんやりとした顔だけの影が立っていた。

「お前も、聞いてしまったね…」と、その影が囁いた。

次の瞬間、私は意識を失った。

気がつくと、公園のベンチに横たわっていた。すべてが夢だったのかと思ったが、ふと気づくと、スマートフォンに未読のメッセージが。

「もう遅い。あの日の声を、もう聞いてはいけない。」

そのメッセージの送信者は、誰も知らないはずの私の友人の名前だった。

それ以来、私は声を聞くこともなくなったが、夜中になると、耳元にあの叫び声がこだますることがある。

そして、私の中に、あの声の正体が少しずつ浸透してきている。

この話は、実は私自身の経験を書き残しているつもりだが、実は誰も信じてくれない。だって、あれは絶対に「ただの夢」じゃないから。

ただ、あの声を聞き続ける限り、もう二度と普通の生活には戻れない―。

1/2
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。