ゆびきりさん
投稿者:俺的な人物 (1)
友達の友達から聞いた話です。
――というのが、都市伝説の典型的な語り出しなんですってね。
要は実態のあやふやな話なんですけれど、聞いて頂ければ。
仮にKさんとしますか。
彼女の通う小学校で、【ゆびきりさん】というおまじないが流行ったことがありました。
やり方は簡単で、
1.紙に手形を描いた上で切り抜く。
2.親指・人差し指・中指・薬指・小指にそれぞれ異なる願いを書く。
3.予め目隠しをされた人……【ゆびきりさん】に、任意の指を一本ハサミで切らせる。
4.切られた指に書かれた願いが叶う。ただし、指は一生持っていなければならない。
というものでした。
異なる願いであれば、一人が複数の指を受け持つことも可能であるため、【ゆびきりさん】担当と合わせて、最低2人から遊ぶことの出来るおまじないだったそうです。
ビジュアルはともかく、よく取り沙汰されるこっくりさんほどリスキーではなく単純明快なため、低学年にもやり始める児童がいたといいます。
さて、Kさんはいじめられっ子でした。
私物を隠されたり、聞えよがしに悪口を言われたり、グループから外されたり、まあ小学生に思いつくいじめは一通り経験していました。
担任は口頭で軽く注意するのみで、真剣な対応をしてくれているとは言い難く、Kさんへのいじめは無くなりませんでした。
そこにきて【ゆびきりさん】の流行は、Kさんへの嫌がらせに拍車をかけるものでした。
「Kが死にますように」
「Kが不幸になりますように」
「Kが事故にあいますように」
「Kがケガをしますように」
「Kが転校しますように」
教室で、そんなKさんへの悪意を込めた【ゆびきりさん】を嬉々として遊ぶ同級生達。
Kさんはその光景を見て、一人うつむき涙をこらえる日々でした。
Kさんは一人っ子で友達がいません。
よって、最低2人から始まる【ゆびきりさん】も遊ぶことができません。
親にこんなおまじないに付き合ってもらうわけにもいきません。
いじめられていることすら、彼女は言い出せなかったのです。
「私も【ゆびきりさん】がやりたい。願いが叶ったらいいのに……」
Kさんへのいじめの道具にされている【ゆびきりさん】。
しかし、彼女には憧れのおまじないでもありました。
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