11月11日
おかしい。部屋の棚に隠していたはずのステッキがなくなっていた。梨花の身長では例え台に乗っても届かない高さだ。梨花ではない。ステッキはどこに消えたんだ?
11月12日
なんで
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調査メモ
11月12日早朝、〇〇県〇〇市のアパートから小学2年生の西岡梨花さんが落下、その場で死亡が確認された。自殺か事故かなど、詳しいことはまだわかっていない。第一発見者によると、〇体の側には女児向け玩具が落ちていたとのことだが、警察の捜査によるとそのようなものは見つからなかったとのことで――――
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被疑者取調べ音声記録
[再生開始]
『――――今回の事件、先に行っておきますと、我々はあなたが梨花さんを○したとは考えておりません。自〇と事故の方向で調査を進めています。――――それでですね、この日記によると学校でいろいろあったようですが、他に何か梨花さんに変わったことなどありましたか?』
『(無言)』
『西岡さん、突然の娘さんとの別れ、お辛いことと心中お察しします。しかしですね、我々は今回の件、西岡さんのためにも、そして娘さんのためにも原因究明が必要と考えています。ご協力いただけませんか?』
『(掠れた声で)ス……ッキ』
『……今なんと?』
『誕生日におもちゃのステッキをあげてから……梨花はおかしくなってしまいました』
『はぁ、ステッキですか。確かに10月21日から梨花さんが亡くなった日までの日記に頻繁に登場しますが……えっと、どういうことでしょう』
『わかりません』
『わかりませんって……』
『梨花が見ていた世界が、私にはわからないんです。猫を○して、クラスの子に怪我をさせて……それらを悪びれませず、怪獣がどうとか悪を懲らしめたとか……父である私がどうにかしなくてはならなかったのに、優しかった梨花は取り憑かれたように暴力的になってしまった………』
『――――つまり、そのステッキには、何か人を狂わせる魔法のような効果があったと?』
『いえ……あのステッキに魔法の力なんてものはなかったのでしょう。現に梨花は空を飛べなかった』
『なんの話をしているんです?』
『事件の話ですよ刑事さん。梨花は空を飛びたかったんだと思います。魔法少女のように……自由に空を――――』
『西岡さん、やはりあなたはまだお疲れのようだ。長い時間拘束してしまって申し訳ない』
『(無言)』
『最後に一つだけ。先ほどから話に出てくるステッキ、第一発見者によりますと現場にそれらしき物が落ちていたそうなのですが、捜査時には見つかりませんでした。何かご存じありませんか?』
『知りません。あなたたちが見つけられないだけでは?物が勝手に消えるわけない。そんな魔法みたいなこと、あるわけがないでしょう?』
[記録終了]
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