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不思議体験

陰影さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

消えた従兄弟
長編 2024/05/11 12:31 14,191view
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後からついてきた祖母に尋ねたが

「いんや、そんなところに扉なんてねえよ」

と真面目な顔で答える。

「あんた、まだ頭が変なんじゃないの?休んでなさいよ」

母にそう言われ、仕方なく俺は和室に戻った。

結局俺はその後夜まで深い眠りについてしまったのだが、その時に変な夢を見た。

あの草原で、正也を探している夢だ。

名前を呼ぶと「ここだよー!」と返事が返ってくるのだが、声のするほうへ向かっても誰もいない。

そうやって暑い中、探して探して探し回って、やっと正也の後ろ姿を見つけた。

「正也!!」

急いで駆け寄ると、正也がゆっくり振り返る。

しかしその正也の顔は……

「わあっ!!!」

叫んで飛び起きると、隣で寝ていた父が

「どうした?怖い夢でも見たか?」

と頭を撫でてくれた。

母も心配そうに背中をさすってくれた。

俺はぼろぼろと涙を流しながら、延々と

「正也、ごめん、正也、ごめん」

と呟いた。

俺が戸をちゃんと開けられなかったせいで、正也はあの世界に囚われてしまったのだ。

夏休みが終わると同時に東京に帰ったが、その後もしばらくは正也の夢を見た。

しかし、だんだんと正也の姿が見えなくなっていき、しまいには名前を呼んでも返事が返ってこなくなった。

やがて草原に行く夢も見なくなり、正也に関する記憶も薄れ、次第に“正也はイマジナリーフレンドだったのだ”と思うようになった。

あれから長い年月が経ち、祖父母の家も老朽化が進み取り壊されることとなった。

最後に家の様子を見ておこうと家族で祖父母宅に訪れた時、俺は裏口の前に何かが落ちているのを見つけた。

それはあの日、正也が持っていた小さな懐中電灯だった。

あれ以来、あそこには足を踏み入れていない。

5/6
コメント(2)
  • その場にいたような怖さを感じた。

    2024/05/26/21:29
  • 異世界への扉だったのかな

    2024/06/14/08:52

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