神隠し銭湯
投稿者:あ (2)
これは俺が小学2年生の頃の話。
俺は昔、よく近所の銭湯に行ってた。
古臭い感じの場所で、番台さんが居るような”いかにも昭和”って感じの場所だった。親父が早く帰ってきた日はよく2人で行っていた。そこで風呂上がりに飲む牛乳がまぁ美味いこと。俺はやめろと言われているのに一気飲みをして、親父に軽めのデコピンをされることがよくあった。
ある日、親父が急な残業で帰って来れなくなったことがあった。その日は親父と銭湯に行く予定だったから、仕方なくひとりで向かうことにした。
銭湯には珍しく誰もいなかった。
ガキだった俺は、大歓喜して大浴場を泳ぎまくっていた。30分くらい泳いだ後、満足した俺は風呂を出たんだよ。そしたらさ、番台のおばちゃんがびっくりして俺を見るの。それで「居たよォ〜!」って叫んだんだ。俺はなにがなんだかわからなくて、その場で号泣した。おばちゃんはオドオドしながら俺に駆け寄って、誰かに電話をかけていた。そして、何も言わずに牛乳をくれた。
牛乳を飲んで落ち着いた頃、おばちゃんが口を開いた。「あなた、今日が何日か分かる?」
俺は「8月6日だよ」と答えた。おばちゃんは少し考えた後、カレンダーを指さして言った。「今日はね、8月8日。アナタは2日もお風呂に居たのよ。ここはね、たまにアナタみたいに”囚われちゃう”人が居るのよ。土地の曰くかしらね。」と。
俺は理解できずに呆然としたが、おばちゃんは話を続ける。
「まぁ、お母さんには迎えに来るように言ったから。タダ券も8枚あげるからね。怖い思いをさせてごめんね」そう言って、まだ濡れている俺の頭を撫でてくれた。
これが過去の話。まぁ、その後もそこの銭湯には行ってたんだけど、俺が中学の時にババアが死んで潰れた。今思うと、そんな状態で銭湯を経営してたババアがいちばん怖いなって思う
銭湯で神隠しなんて、凄い不思議な体験じゃないですか。