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【1日目】
新生活に胸を躍らせて、今日から4年間お世話になるだろう部屋に入居した。
この大都会・東京にある賃貸だ。地方出身の俺からすれば最初は１Kの割に高い家賃だと思ったが、その分東京はアルバイトの時給も高い。それに、今世の中はウイルスの流行により経験したことのないような事態になりつつある。それによって家賃も大分低くなっているようだ。とにかく、これから学生生活を頑張ろう。
【2日目】
大学から通知があった。入学式は中止になった。しかも、授業の開始日が1か月延期になった。それもあの感染症だ。どうやら簡単にワクチンが作れないらしい。それに命に関わることにもなるかもしれないみたいだ。本当にパンデミックということになるのではな
いか？少し怖い。
それとアルバイトを探さなくては。1か月暇になったわけだ。東京にはまだ友達もいないから人間関係作りも兼ねてお金を貯めておこう。
【3日目】
アルバイトの面接に行ってきた。背伸びして居酒屋にチャレンジした。少し遅刻しそうだったが、ギリギリ間に合った。店長も明るくてとても良い人だ。来るお客さんの話も聞いて東京のことを知りたいな。うん、今日はいい一日だった。
ただ、今日面接に行く前、扉を閉める直前何か見えたような気がした。人っぽいもの。まぁ、まさかな。事故物件だとしても俺は出る気なんかない。東京に事故物件なんて腐るほどあるしな。
【4日目】
今日は不可解な日だった。
朝、起きた。朝ではない、11時だった。なんだかんだ二度寝三度寝してからいつものようにタバコを吸おうとして換気扇のあるキッチンの洋室のドアを開けたら、人がいた。人生で一番驚いたと思った。反射的にドアを閉めて体重をかけてこちら側に入ってこれないようにした。少し息を整えてドアのガラスから覗いてみた。
俺がいたのだ。人生で一番驚いた瞬間を更新した。
その「俺」はボサボサの髪でボーっとした顔でタバコを吸っているような仕草をしていた。だがタバコは持っていなかった。
意味の分からない光景に戸惑い声を上げてしまったが、あちらは何も気付いていない。ビビりながら見ていたら、居酒屋の店長からの電話が来た。あたふたしながら電話に出てしまった。
ドアの向こうを覗くと「俺」はいなくなっていた。
居酒屋バイトは不合格だということだけは頭に入ってきた。どうやら休業するらしい。
【5日目】
また11時に起きたが、昨日のことやバイト不採用のことなどあってすぐに動けない。また1時間後にいつものルーティンだ。大学が始まるまであと1か月弱か。することがないと恐ろしく長いな。訳の分からない体験も人に早く話したいな。
【6日目】
今日は街に出てみようと思い、用もないのに街をプラプラ歩いた。でも、街に人が少なく、活気がない。10時という学生には早すぎる時刻に起きてすぐ家を出たが、昼前には家に帰ってきた。流行りの感染症が本格的に世間にダメージを与えてるらしい。シャワーを浴びて寝ようと思い、風呂場で汗を洗い流して、髪を乾かしてベッドのある洋室に戻ろうとドアを開けようとした。
が、違和感があるのだ。すりガラスと透過ガラスのチェック模様に縦型の影がある。近づいてみると、誰かがこちらを覗いていた。腰を抜かしそうになった。
「俺」だ。また居たんだ。
こちらを覗いている。恐怖も少しあったが相手が自分だから、知らない不審者よりよっぽどマシだ。だからドア越しに話しかけてみた。しかし反応がない。ずっとこちらを覗き続けている。さっきよりも少しビビりながらドアを開けようとした。少し怖いから一気に開けた。「俺」はいなかった。
正直、こうして日記を書いているが気持ちは落ち着いていない。ただ、自分を保つためにこの日記はやめない。
【7日目】
昨日早起きしたせいか、今度は9時に起きた。いい傾向だ。だが暇だ。アルバイトも探さないと。しかし、昨日のことが気になる。なんで自分自身が現れるんだ。害はないし、少ししたら消えている。ということで今日はこの現象について考えた。
いつも昼だ。昼に現れる。
どこで？キッチン、洋室に現れた。
何回？1回ずつキッチンと洋室で見た。
そんなことを考えていたら昼頃になったからまずキッチンを見張ってみた。怖いからドア越しに。
現れない。1時間ほど粘って見たが現れない。
時刻は12時30分だった。どっと疲れた。正直、少しムカついたが、このまま現れなければいいか。
明日、ドアを開放して洋室の端から玄関方面に向かって観察しよう。
それで何もなければ、もう大丈夫、、、なはず。
なるほど