【8日目】
11時に起きる生活に戻ってしまった。とにかく今日で白黒つけよう。あれが俺の妄想なのか、現実なのか。初めての1人暮らしと感染症の流行で引きこもりでおかしくなってしまったという方がまだマシだ。
玄関から一直線上に見える洋室の端に椅子を置き、スマホを触りながら昼頃を迎えた。
気付いたら「俺」がいた。机の前で空気椅子をしている。椅子は俺が使っているからだ。そして何かを書いているような仕草をしている。何の仕切りもなくこんなに近くでマジマジと見える環境に物怖じした。ゆっくり深く呼吸をし、微動だにせぬよう観察を続けた。ジーっと見続け、見続け、見続け、、、と視界がボヤけて来た時、
バッと「俺」がこちらを向いたのだ。
一瞬身震いをしてしまい、
「うおぉ」
と声を出してしまった。それと同時に「俺」はフッと消えた。
何回目かの何が何だか分からない、という感覚。だが分かったことがある。
姿を現したのはおそらく時刻は正午前後、時間は3分間くらいだ。
しかし、こんなに間近で自分自身を見て、しかも目が合ったらなんだか疲れる。てか俺ってこんな顔してたんだな、鏡と違うじゃねーか。悪い意味で。
もう眠くなってきたので寝る。
【9日目】
11時、起床。昨日、疲れて寝てしまった。だからなのかあまり記憶が整理されてないのでこの日記を見ることにした。この日記も、もう今適当に書いてしまおう、どうせ暇だ。
1日目、2日目、3日目・・・8日目。
そうだ！昨日俺自身がこの机に向かっているところを見たんだ！
今、昨日椅子をずらして座っていた場所を見てみたがやはり何も異変はない。
時刻は正午ちょっと過ぎ。
そして、今読み返して気付いたこと。
俺はおそらく未来を見ている。翌日の正午から3分間。ただやはり害はないし、声も聞こえない。ただ、視えているだけだ。こんなことができたって何もできないし、もっとちゃんとした超能力欲しいな。せめて、朝の時間帯の未来が見えるなら、遅刻しないように対策とか取れるのに。
【10日目】
なんだかどうでもよくなって昼過ぎまで寝てしまった。起きてすぐ、今10日目の日記を書いている。
そうか、じゃあ昨日の正午に俺はベッドに寝ていたのか。昨日の俺が振り向いてベッドを覗けば俺がいたのか。ていうか、さっきまで昨日の俺が俺のことを見ていたかもしれないのか・・・いや、昨日の俺は「俺」を見てないから見られてないか。
ん？じゃあ未来を見てその行動と意図的に違う行動をするとどうなるんだ？
「未来を変える」ってこと。まぁ、別に変なことは起きないか。
いや、そもそも「変えた未来」しか昨日の俺には見えないのか、、？
訳が分からなくなってきた。どこまでの「過去の俺」がいるんだ？
というか、「過去の俺」がいるならば、今の俺はなんなんだ！？俺は過去の俺が見ている変えられるべき未来の「俺」なのか！？
もう訳が分からない。この「俺」は俺じゃない。居酒屋の店長もきっと変えるべき未来の「店長」だ。
いや、違う。この日記を書いている俺は俺だ。この日記だけが真実を記している。今まであったことを確認しよう。
よし、何も変わっていない。安心だ。
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なるほど